油の流出が環境に与える影響。家庭から出る油の処理方法もご紹介
私たちの日々の暮らしのなかで欠かせない油。
ろ過して再利用するなど工夫することはできますが、ずっと使い続けることはできず、いつかは処分しなければなりません。
今回は、そんな使用した後の油(廃食油)の現状や廃食油の流出が環境に与える影響、家庭でできる対策などについてお伝えします。
廃食油の現状
環境省のデータによると、日本では年間約230万トンの食用油が消費され、そのうち約45万トンが廃食油になります。
この廃食油の多くは飲食店や食品製造工場から排出される事業系のものと言われていますが、事業系の廃食油のほとんどは回収業者に回収されて新たな資源としてリサイクルされています。
一方で家庭からでる廃食油のリサイクルはあまり進んでおらず、約90%がゴミとして廃棄されたり、排水と一緒にキッチンから流されてしまっているようです。
廃食油の流出が環境に与える影響
まず、家庭から出た排水は下水道を通って下水処理場で処理されます。料理に使われる動植物油は下水処理場で処理できますが、多量に流れ込むと冷え固まって下水管の詰まりの原因になったり、処理場での水処理に悪影響を及ぼします。
例えば、汚れた水を浄化処理するには電力が必要なので、油を排水するとより多くの電力が必要になります。また、汚水処理における重要な指標のひとつに「生物化学的酸素要求量(BOD)」というものがあり、これは水中の有機物を微生物が分解するときに消費する酸素量のことです。汚水をきれいにするためには多量の酸素が必要で、そのためにはきれいな水をたくさん使用することになってしまうのです。
万が一、下水処理場で処理しきれなかった廃食油が川や海に流れ込んでしまった場合、キッチンから流れる動植物油は微生物によって分解されますが、その分解速度はとても遅く、分解しきれなかった油が徐々に酸化していき、酸化した油は水中の酸素を消費し、生物に悪影響を及ぼします。また、分解されなかった油がオイルボールという浮遊物となり悪臭を放つこともあります。
家庭でできる対策・油の処理方法
私たちにできることは、家庭から出る廃食油を正しく処理し、水質汚染を少しでも防ぐことです。そこで正しい油の処理方法をご紹介します。
①紙パックやビニール袋に入れて燃えるゴミの日に捨てる
油は可燃ゴミとして処分できます。使用済みの牛乳パックやビニール袋の中に古新聞や使用済みキッチンペーパーなどを詰めて、冷えた廃食油を入れます。自然発火を防ぐため、水を少し加えましょう。紙パックの口をしっかりテープで留めたり、漏れないよう袋は2重にするなど工夫して捨てましょう。
②油凝固剤で固めて燃えるゴミの日に捨てる
市販の油凝固剤で油を固めて可燃ゴミとして捨てる方法です。油凝固剤は油がまだ熱いうちに投入し、よくかき混ぜて溶かします。そのまま放置し冷えて固まったら捨てましょう。
③自治体に資源ゴミとして回収してもらう
自治体によっては廃食油を資源ゴミとして回収しているので、一度確認してみてください。
回収された廃食油は燃料や資源としてリサイクルされます。可燃ゴミを減らし、資源として再利用できる一番いい方法ですね。
まとめ
かつては産業排水が主な原因だった川の水質汚染ですが、工場などに対する規制が強化され排水処理対策の進んだ今、汚染の原因の7割が家庭から出る生活排水と言われています。
今回取り上げた廃食油の他にも洗剤などについても同じで、
・環境にやさしいものを選択する
・使用を減らそうと努力する
・使ったら正しく処理する
こういったひとりひとりの少しの工夫の積み重ねで水質汚染は防げるのではないでしょうか。意識して生活していきたいと思います。