SDGs目標10について
日本のSDGs達成度は、166か国中21位(前年163か国中19位)へ後退し、
目標10「人や国の不平等をなくそう」は【重要な課題がある】と評価された。
地球上の「誰一人取り残さない」 (leave no one behind)
SDGsの根幹にある「持続可能な開発」とは、「将来の世代の欲求を満たしつつ、現在の世代の欲求も満足させるような開発」と定義され、国や地域、文化、伝統、そしてそれぞれが置かれた状況や違いを踏まえた上で、今を生きる私たちの様々な欲求を認めつつも社会が抱える課題や矛盾を網羅的に明示するとともに、将来世代のために私たちが長期的かつ地球規模で取り組むべきことを明らかにしています。
私たちは、豊かさを追求しながら地球環境を守るため、17の目標と169のターゲットを2030年までに達成することを目指し、地球上の「誰一人取り残さない」ことを誓っています。SDGs達成に向けた各国・各人の取組は、世界への貢献及びお互いの信頼を醸成して、地球規模での課題解決に向けた原動力となり国際社会が抱える様々なリスクを回避・軽減することで、結果として「誰一人取り残さない」、つまりは一人ひとりの幸せにつながっていきます。
2023年、日本のSDGs達成度は21位
2023年版「持続可能な開発報告書」(SDSN)によると、SDGs達成度ランキング1位はフィンランドで3年連続トップ、日本は21位、韓国31位、米国39位と続いています。
この報告書は、国際的な研究組織「持続可能な開発ソリューション・ネットワーク」(SDSN)が、国連などの資料をもとに各国の取組を100点満点で点数化してSDGs達成度を公表しています。
日本のSDGs達成ランキングの推移は、2017年の11位をピークに下降傾向にあり2023年は世界21位に後退しました。
2016年から2030年を対象とするSDGsは、2023年の今年が折り返しの年にあたり、日本だけでなく世界全体の取組状況が重要で、報告書は世界全体のSDGs達成度はコロナ禍の影響もあって2022年時点で67%にとどまり、特に課題とされるのは高所得国と低所得国の格差であるとしています。
現在のランキングでは、上位にはヨーロッパ、下位にはアフリカを中心として貧困状態にある国や経済格差が大きい国などが多くなっています。世界的にも格差が深刻化していて、特に低所得国では紛争や差別などが続く国も少なくありません。
SDGsの目標10は、この「人や国の不平等をなくそう」というもので、報告書は各国の取組について17の目標ごとに評価しており、日本における目標10の取組は【重要な課題がある】と評価され、さらなる取り組みが求められています。最終的には、私たちはSDGsの達成度を競うものではありませんが、現状のままでいいのか、このままのやり方で目標が達成できるかについては、常に検証することが必要であり、達成に向けて足りないことがあれば補い、必要ならばさらなる努力をすることが不可欠です。
目標10「人や国の不平等をなくそう」
私たちは、これまでに豊かさを求めて社会や経済を発展させてきましたが、その一方で不平等が作り出されて社会の格差が広がったことも事実です。先進国と途上国、開発途上国とさらに開発が遅れた国、同じ国や地域の中でも豊かな人と貧しい人、男性と女性、障害のある人とない人、人種、民族など、世界には、様々な状況で不平等が生じています。
不平等の影響は、単に所得の格差が生じるということだけでなく、人の一生を左右するほどにはるかに幅広い範囲に及んでいます。不平等は、その人の寿命のほか、医療、教育、衛生といった人が生きるための基本的サービスへのアクセスにも大きな影を落とします。不平等が広がることは、人類発展の基盤である人の能力を開発・発展させること妨げる、つまり個人が努力してスキルを習得しようとする意欲をくじき、その機会さえ奪うこととなり、また経済的・社会的な人材の移動を難しくすることで社会、経済の成長を阻害しています。さらに、不確実性や脆弱性、不安を深く根付かせ、政府や制度に対する信頼を根底から損ない、社会的不和を高めるとともに、暴力や紛争の引き金にもなり、移民排斥や極端なナショナリズムの勃興にもつながります。私たちは、不平等の根本的原因に対処しない限り、世界が一体となって課題に対処する力を発揮できず、紛争や気候変動など社会の大きなリスクとなっている課題への対応が難しくなっています。
このような社会において、SDGsの目標10である「人や国の不平等をなくそう」は、国内及び各国間の不平等を是正する(Reduce inequality within and among countries)というもので、国と国の間または国の中での不平等を減らすための目標です。SDGsは、「人や国の不平等をなくそう」を人類が目指すべき方向として掲げることで、世界的なリスクの解消に向けた一つの枠組みを提供しており、先進国も途上国も含む、すべての国に適用される普遍的な目標であり、地球上の誰一人として取り残さないことを理念としています。各国は、所得が水準より低い人々の収入をより早く増やすことや、年齢、性別、障害、人種などによる社会・経済・政治的な機会の不平等をなくし、特定のグループを差別するような法律や慣習をなくすこととしています。また、先進国と途上国の間の不平等をなくすため国際的な金融の取引に対する規制や制度を強化することや、貿易において途上国に特別な配慮を行うこと、世界の金融システムにおける意志決定の際に、途上国の参加や発言力を拡大することなどもこの目標には含まれています。
私たちにできること
私たちは、人や国の不平等をなくすことで、貧国や飢え、争い、さらに環境問題などの世界的課題や社会的リスクに対して根本的解決に向けた道筋をつけることができます。
日本は、これまでにも国際的な取り決めに基づき様々な取組を展開してきました。政府は、国際保健の推進、難民問題への対応、女性の輝く社会の実現を指針として持続可能な経済・社会づくりのため、国際社会のモデルとなるような実績を積み重ねるよう努力しています。また、SDGs達成に資する取組を行っている企業や団体を表彰する「ジャパンSDGsアワード」で発表された事例では、地域における飲料の宅配システムを中心とした就労機会の提供を通じ、収入増加による生活の安定さらに子女等の教育機会の拡大に貢献や、自動車リサイクルのバリューチェーン構築と現地雇用の創出などが見られます。
もちろん、SDGsは国や企業だけが取り組むべき目標ではなく、その目標及びターゲットは遠い世界の話しでもなく、私たち一人ひとりの日常の生活や消費行動に大きく関わっている内容であり、個人の意識や行動の成果が目標を達成するためのカギを握っていると言っても過言ではありません。私たちは、「人や国の不平等をなくそう」について学び考えるだけでも、新たな気づきを呼び起こされ、世界の現状や課題を知る契機となります。そして、私たちが解決を求められている環境問題や社会のリスクにチャレンジするためにもSDGsが大きなヒントとなり、その実践が課題の解決に向けた具体的な取組となります。
それでは、私たちができる具体的なことは何かを考えてみましょう。
1 不平等について自分なりに考えてみましょう
先進国と途上国、同じ国や地域の中でも豊かな人と貧しい人、男性と女性、障害のある人とない人、人種、民族、宗教などにおける不平等とはいかなるものであるかについて、具体的な事例や様々な意見を参考にして自分なりに考えてみましょう。
2 自分にできることは何かを探して実践してみましょう。
国や企業・団体とは違うレベル・次元における個人や身近な人とできることを模索してみてください。たとえばボランティア活動に参加する、途上国に学校を建てる事業に募金をするなど、できることはいくらでもある中で自分が納得できることを探して実践してみましょう。
3 不平等が減少しているという実感を持つ努力をしてみましょう。
これは難しいことではありますが、自分が行った行動に対して評価を行い、責任を持つことは必要です。ただ募金をするのではなく、そのお金がどのように使われて、どうような効果が生じたかについて自分ができる方法で検証してみてください。たとえば、現地の活動報告書を確認してみるなど、自分が行ったことがしっかりと不平等の解消に向かっているという実感を持つことが大切であり、そのための努力をしてみましょう。
私たちは、今を生きる私たちの責務として、また将来世代への橋渡しとしての役割を果たすべく、世界の不平等に対して無視、無関心でいることは許されません。現実から目を背けるのではなく、一人ひとりの小さな一歩を信じて現状を知り、考え、行動する努力が求められています。不平等を減らすには、国や民族、文化や伝統、宗教などみんなが違っていることに気づき、違いがあることが当然だと理解することが不可欠です。そして、お互いの違いを認め、相手を大事にする気持ちの上に自らのできる取組を行うことで、SDGsが目指す地球上の「誰一人取り残さない」、そして「人や国の不平等をなくそう」を達成できると信じています。