ドライヤーレス推進でSDGsを啓蒙する美容業界の野心
「髪を乾かす時間がもったいない」と感じた経験はありませんか?毎日5分間ドライヤーを使った場合、1年間で30時間にも及ぶ。髪にも、環境にも負荷大だ。こうした多くの人が不満を抱える「人生で最もムダなドライヤー時間」をなくす(へらす)取り組みが注目されている。
環境省主催の「第9回 グッドライフアワード」でサスティナブルデザイン賞に輝いた「理美容室をプラットフォームとしたドライヤーレス推進で、らくちんCO2削減プロジェクト」(以下、ドライヤーレス推進)を紹介する。
◎「ドライヤーレス」は人にも環境にも優しい
本プロジェクトを提唱するステップボーンカット協会の「ドライヤーレス」とはいかなる取り組みなのか。
ドライヤーを使わない~ドライヤーをかける時間を減らすことで、ヘアサロンや各家庭の省電力と顧客の豊かな時間を叶えることです(一般社団法人ステップボーンカット協会)
ドライヤーを使わない利点を顧客に伝えドライヤーレスを推進する取り組みに加え、薬剤を最小限に抑える商品開発、従業員の労働環境改善による生産性向上などが評価ポイントとなった。当協会の主張は以下の通り。
①ドライヤーを使って髪を乾かすことで髪が健康を保つのではなく、ドライヤーの熱で髪は傷むこと
②濡れたままだと風邪を引くのではなく、抵抗力ができて逆に風邪をひきにくい体質になること。
③ドライヤーを使わないと細菌が繁殖するのではなく、抗菌効果のある植物性シャンプーを使うこととで、逆に細菌の繁殖を抑えること
つまり、自然乾燥でもキマる形状記憶カットの提案である。ヘアカットのみで再現性と艶髪を生むステップボーンカットという特許技術でブローレス、ドライレスを目指すものだ。ドライヤー時間をなくす、もしくはドライヤー時間を従来比20%削減させて、顧客の大切な余暇時間を捻出させQOLを向上させる取り組みが評価点となった。
◎ドライヤーの誕生はたった100年前
歴史をひも解くと、世界初のドライヤーは1920年頃アメリカで誕生した。日本では1973年にパナソニックがホームドライヤーを発売。それ以前は、自然乾燥や1〜2週間に1回湯で洗い流す洗髪が主流であった。ドライヤーの普及に伴う、毎日髪を洗う習慣が定着したのはわずか50年前に過ぎないのだ。
【参考:日本における時代ごとの洗髪頻度】
- 1950年頃:平均月1-2回
- 1980年頃:2~3回/週
- 1990年代半ば:ほぼ毎日(10-20代女性)
- 2015年:ほぼ毎日(10-50代女性)※3
髪や環境への配慮からノープー(シャンプーを極力使わない洗髪方法)、ドライシャンプーでヘアメンテナンスする人は少なからず存在する。世界を見渡すと、毎日髪を洗う派の方が少ないとの声も聞く。「今すぐ髪を洗う頻度をへらす」となると、正直ハードルが高い。一方で、過度な洗髪習慣は髪に負担をかける、小型家電が地球温暖化の一因である事実を踏まえておきたい。
今後も本プロジェクトのような取り組みが増え続けるだろう。身近な事例を通した消費者の意識転換こそが、真のメッセージであり意義を持つのかもしれない。