SDGs特選コラムNo. 674

ホントに安心&安全?スポーツアパレルのリサイクル商品に期待されるこれからの商品開発とは

普段私たちが身につけているスポーツウェア。
どんなに激しい動きでも我々にストレスをかけず、自由なパフォーマンスをサポートしてくれる。
これまでスポーツウェアが進化を遂げてきたのは、ウェアを開発するスポーツ企業がアスリートの声、ユーザーの意見などのニーズを反映させようと努力してきた功績と言えるだろう。
さらに、SDGsの達成が求められている昨今においては、さまざまな企業が工夫を凝らした商品開発に動いている。
しかし、皆さんが身につけているウェアやシューズなどは本当に安心•安全に利用できるものだろうか?

本記事では、さまざまな文献や研究で述べられている健康面や安全面での懸念点に触れながら、今後のスポーツアパレルに求められる商品開発について考えていきたい。

リサイクル商品を開発している企業の事例

それでは、現在SDGs達成をターゲットにして、リサイクル商品の開発をしている企業の事例を紹介しておきたい。

事例1:adidas×Parley for the Oceans

adidasは地球と人類が生き残るための方策として、プラスチックごみの増加を食い止める必要があるとして海洋の環境保護団体のParley for the Oceans(パーレイ•フォア•ジ•オーシャンズ)とパートナーシップを結んだ。
adidasは以前まで使用していたポリエステル素材の代わりにParley Ocean Plastic素材を利用することで、ゴミを商品に代える取り組みを行っている。
現在では数百万もの商品にリサイクルされたプラスチック素材が利用され、大規模な持続可能なビジネスとして発展している。

事例2:アシックスのケミカルリサイクル

アシックスは不要になった衣類などを回収し、ケミカルリサイクル(化学的な手法によって別の商品に代えるリサイクルの手法)によってエコバックの原料に組み替える取り組みを行っている。

このように、大手のスポーツメーカーもさまざまなかたちで環境に配慮した商品開発に努め、ゴミを少なくすることや、利用されていたものを形を代えることでさらに利用価値のあるものに生まれ変わらせるビジネスモデルを構築している。

リサイクル商品に関する懸念点

それでは、前述のリサイクルの事例などのプロセスや購入した後の利用状況などまでに踏み込んで、本当に環境に配慮されているのかを見ていこう。

懸念点1:リサイクル自体が環境破壊につながる

新設されたリサイクル工場において実施された研究では、廃棄プラスチックは加工するプロセスにおいて何度か洗浄される。
その際、排水にマイクロプラスチック(直径5mm未満の粒子)が流れ出ているというのである。
この研究を実施したプラスチック研究を行っているエリナ•ブラウン氏はリサイクルを否定するのではなく
『我々が行っている行動が、どんな影響を及ぼしているのかを理解する必要性』
を訴えている。

同時に、解決策はプラスチックゴミの回収やリサイクルでは、
『プラスチックごみを削減すること』
と述べている。

参考サイト https://wired.jp/article/yet-another-problem-with-recycling-it-spews-microplastics/

懸念点2:利用している商品は本当に安全なのか

複数のポリエステル、ポリエステルを混合した衣類を対象に、洗濯と着用して日常生活を過ごしてもらった時のマイクロファイバー(微細な繊維)の放出度を測る研究がなされた。
その結果、洗濯と日常生活を過ごす過程で大量のマイクロファイバーを放出していることが確認できたというのである。
このようなマイクロプラスチックはかなり小さく、下水処理の際のフィルターにかからず川や海へ流れ出るようだ。
流れ出たマイクロプラスチックは、海洋環境の悪化を脅かす可能性がある。

参考サイト https://www.gizmodo.jp/2020/03/microplastic-pollution.html

今後のリサイクル商品開発へ期待

これまでの内容が現在行われている企業によるリサイクルの取り組みを否定するように聞こえる方もいるかもしれないが、全くそのようなつもりはない。
これまでゴミとして出されていたものを新たなものに生まれ変わらせる技術やアイディアはむしろ賞賛に値するし、今後も社会全体に浸透していってほしい。
ただ、あらゆる物事のプロセスを細かく分解し、見直すことの重要性を本記事を通して読者の皆様に提案できれば幸いである。
今後の商品開発において、利用価値の向上に合わせて、製造工程でも環境に配慮される世の中になってくれることを筆者としても、ユーザーとしても切に願っている。

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