ラッコが絶滅危惧種の理由とは?海の森を守る役割と私たちにできること
「水族館でラッコを見られなくなるかもしれない。」 このような話を聞いたことがあるでしょうか。
国内の水族館で飼育されているラッコは、三重県の「鳥羽水族館」にいるメス2頭(メイ、キラ)のみとなり、高齢化が進んでいます。最盛期には全国28館で122頭が飼育されていましたが、1998年に米国が原則輸出禁止の方針を打ち出したため、新規での導入ができなくなりました。寿命で亡くなるラッコを補うためには繁殖で増やすしかありませんが、現状では非常に困難な状況です。
ラッコが絶滅危惧種である理由

ラッコは環境省レッドリストで絶滅危惧IA類類(ごく近い将来、野生での絶滅の危険性が極めて高いもの)、IUCN(国際自然保護連合)のレッドリストでEN(危機)に指定されている絶滅危惧種です。
参照:IUCN Red List(国際自然保護連合)
毛皮目的の乱獲
1800年代を中心に毛皮目当ての乱獲が行われた結果、かつて推定30万頭いたラッコは1900年代初めには2,000頭以下にまで激減しました。過剰な乱獲に加えて、近年の海洋汚染や地球温暖化も生息数減少の一因となっています。
海洋汚染と原油流出事故
海洋生態系に極めて深刻な打撃を与えた悲劇として、1989年のエクソンバルディーズ号原油流出事故があります。米国アラスカ州沖で大型タンカーが座礁し、約4,200万リットルにおよぶ原油が海へ流出。これにより約3,000匹のラッコが死亡したとされています。
海洋汚染はこうした大事故だけでなく、私たちの日常の暮らしからも引き起こされています。
- 化学物質・油類の流出(洗剤や工場排水、油汚れなど)
- プラスチックごみや未処理の廃棄物
- 生活排水
合成洗剤の過剰使用や天ぷら油の流出、プラスチック製品の不適切な破棄など、日々の暮らしの行動を見直すことで防げる汚染も数多く存在します。
天敵増加と生息地の失調
ラッコの80%以上はアラスカ周辺に生息しています。しかし、シャチやサメなどの天敵の増加に加え、生息環境の悪化が深刻化しています。
特に、毒性藻類(赤潮)の発生が生息地を汚染し、大きな被害を与えています。また、海水温の上昇によってエサとなる貝類やウニの分布が変化し、十分な食料を確保することが難しくなっています。
海の森を守るラッコの役割

ラッコはウニや貝類を大量に食べるため、かつては漁業者から厄介者扱いされることもありました。しかし、ウニが増えすぎると海藻を食べ尽くしてしまい、「磯焼け」と呼ばれる不毛の海を作り出してしまいます。
実際、ラッコが激減した海域では磯焼けが発生し、多くの魚介類の繁殖に悪影響を及ぼしました。一方で、ラッコが生息する海域ではウニの食害が抑えられ、豊かな「海藻の森」が維持されています。これにより、二酸化炭素(温室効果ガス)の吸収量が増加し、地球温暖化防止にもつながっているのです。
さらに、ラッコが動き回ることで海草の有性生殖が促進され、ラッコがいる海域の方が遺伝子の多様性が高く生態系が安定しているという研究結果もあります。ラッコは海藻・海草類の存続を助け、海の生態系全体のバランスを整える重要な存在です。
参考:NATIONAL GEOGRAPHIC「ラッコがいると海草が強くなる、アマモの遺伝子が多様化、研究」
キーストーン種の重要性
ラッコは「キーストーン種(中核種)」の代表例として知られています。キーストーンとは、生態学者ロバート・トリート・ペインが提唱した概念で、「生物量としては少なくても、生態系全体に対して非常に大きな影響を与える種」を指します。
語源は古代ローマの石橋の中央にはめ込まれた「要石(かなめいし)」です。小さな一箇所の石であっても、それが抜けると橋全体が崩れてしまうように、ラッコが姿を消せば海洋生態系全体が大きな危機に直面することになります。
霧多布岬の野生ラッコ
日本国内でも野生のラッコを観察できる貴重な場所があります。それが北海道浜中町の「霧多布岬」周辺です。
近年は野生のラッコを一目見ようと多くの観光客やカメラマンが訪れています。浜中町では、ラッコにストレスを与えないよう独自の観察ガイドラインを作成し、適切な距離を保つよう呼びかけています。観察する際はルールとマナーを徹底して遵守することが求められます。
ラッコを守る日常の行動
豊かな海の象徴であるラッコは、決して遠い世界だけの生きものではありません。彼らが暮らす海と私たちの生活は直接つながっています。ラッコの絶滅を防ぎ未来へつなぐためには、私たち一人ひとりの選択が大切です。
MSC認証商品の選択
購入する水産物を選ぶ際は、持続可能な漁業で獲られた証である「MSC認証(海のエコラベル)」がついた商品を選びましょう。適切な水産資源管理を応援することが、ラッコのエサとなる海洋生態系を守ることにつながります。
プラスチック使用削減
マイボトルやエコバッグを活用し、使い捨てプラスチックの使用を減らしましょう。海洋プラスチックごみによる誤飲や環境汚染を防ぐことが、ラッコをはじめとする多くの海の生きものを守ります。
保護団体への寄付支援
野生動物や海の保護活動を行っている団体を寄付や寄還活動で支援するのも有効なアクションです。
- WWFジャパン(世界自然保護基金):国内外での野生生物保護・環境保全活動を展開
- SAVE THE RACCOプロジェクト:国内のラッコの未来を守る支援プロジェクト
- Friends of the Sea Otter(Defenders of Wildlife):歴史ある米国のラッコ保護・保全活動(※Defenders of Wildlifeにより運営)
一人ひとりの小さな意識と行動が、美しい海の環境とラッコの未来を守る力になります。
【あわせて読みたい】海の豊かさを守る日常のアクション
海洋汚染やプラスチックごみから海の生きものを守るためには、日頃の買い物や消費行動を見直すことも重要です。地球環境にやさしい選択を無理なく暮らしに取り入れたい方は、こちらの記事もぜひ参考にしてみてください。
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ラッコ 絶滅危惧種に関するQ&A
Q1. ラッコの絶滅を防ぐために個人で寄付以外にできる身近な工夫は?
A. マイボトルの持参やプラスチック製品の削減、環境に配慮した洗剤・石けんの選択が直接的な支援になります。使用後の生活排水やプラスチックごみは巡り巡って海へ流れ着き、ラッコの毛皮の保温機能を損ねたり海洋汚染を引き起こすため、日々の暮らしの選択が最大の保護活動になります。
Q2. ラッコがいなくなると人間にはどのような影響がありますか?
A. 海藻の森が消失して漁業資源が減少するほか、地球温暖化が加速する危険があります。ラッコがウニを食べることで藻場が守られ、二酸化炭素の吸収が促進されています。ラッコの減少は巡り巡って人間の食生活や地球環境に深刻な影響を及ぼします。
Q3. 水族館で日本のラッコが増やせないのはなぜですか?
A. 1998年に主な生息国であるアメリカが輸出を原則禁止したため、海外から新たな個体を迎えられなくなりました。国内にいる個体の高齢化や相性、遺伝的多様性の問題もあり、現在では水族館内での繁殖や増殖が極めて困難な状況となっています。
2026年10月加筆










