オールジェンダートイレに見る「インクルーシブデザイン」の必要性
2021年に発表されたグローバルジェンダーギャップ指数(男女格差を表す指数)で、日本はは156カ国中120位(前回は153カ国中121位)と先進国では最下位ランク。韓国(102位)や中国(107位)よりも低い順位となった。
ご存知の通り、日本が世界屈指のジェンダーギャップを抱える男性優位社会である。本記事ではNY在住である筆者の実体験をもとに、男女平等の先を見据えた「オールジェンダーの理解」と「インクルーシブデザインの必要性」について考える。
◎オールジェンダーってなに?
オールジェンダーとは、男性、女性、性的マイノリティLGBTQIAを含めた総称だ。
- 【lesbian】レズビアン
- 【gay】ゲイ
- 【bisexual】バイセクシュアル
- 【transgender】トランスジェンダー
- 【queer】クィア(異性愛者やシスジェンダーではないが、自分がどのジェンダーやセクシャリティに属する定かでない人。トランスジェンダーの対義語)
- 【intersex】インターセックス(性分化疾患、身体的な性が「男性・女性」の中間またはどちらにも当てはまらない人
- 【asexual】アセクシュアル(エイセクシャル/他人に恋愛感情や性的欲求をあまり持たない人)
ことニューヨークでは性的マイノリティのカミングアウトは珍しくない。自分達の権利向上や尊厳に直結するからだ。前ニューヨーク州知事クオモ氏の娘であるミカエルさんが、クィアのカミングアウトをして話題となった。
筆者のプライベートに目を移すと、ミドルスクールに通う娘のクラスメイトも「自分はバイ」だと公言し、教師もオープンに「Mx.○○(MrでもMsに当てはまらない敬称)」と名乗り教鞭をとる。無論、マイノリティの尊重や配慮は当然のリテラシーであり、倫理に反する言動には敏感に、厳しく対処する。(差別発言やモラル違反があれば、保護者のもとへ注意喚起メールが即刻流れる)
日本ではなかなか想定しづらいシチュエーションかもしれない。しかし、ダイバーシティやらインクルーシブを謳うのであれば、彼らへの理解や配慮、人権の尊重が不可欠となる。
◎「オールジェンダートイレ」の台頭
とはいうものの、実感がともない方もいるでしょう。身近な事例を1つご紹介する。
最近米国でよく見かける機会がふえた「オールジェンダートイレ」。すなわち「どんなジェンダーでもウェルカム」な全ジェンダー共用型のお手洗いである(スカートとパンツを半々ずつ履いた、メイン画像一番右側の人に着目を)。性的マイノリティを社会から取り残さなための、インクルーシブデザインの好事例である。個室トイレだけの場所もあれば、入口は一つで「小便用コーナー」と「個室トイレ」に分かれる施設もある。「利用者に混乱はないの?」との疑問の声もあるが、すぐに慣れるのでご安心を。
本事例はダイバーシティやインクルーシブを考える一例にすぎないが、日本でもこうしたジェンダーの枠組みをとっぱらう社会基盤や意識改革が急務ではないだろうか。