SDGs特選コラムNo. 27

竹の活用方法が広がり続けている!? 「竹害」から貴重な資源へ。

SDSGsの目標「9.産業と技術革新の基盤をつくろう」「11.住み続けられるまちづくりを」
「12.つくる責任、つかう責任」「15.陸の豊かさも守ろう」に関わる「竹」にまつわる話題です。

「竹」は日本では古くから身近な道具、生活日用品として重宝されてきました。
縁起がいいとされる「松竹梅」のなかのひとつであり、
観光名所として名高い京都・嵯峨野の「竹林」は風景満点の景色を創り出しています。

そのような日本文化に欠かせない「竹」ですが、手入れされていない荒れた竹林は、強力な繁殖力で拡大するため厄介な存在として対策を迫られています。

<竹林拡大についての参考調査引用情報>

竹林拡大の現状
放置された竹林の拡大状況を明らかにするため、竹林拡大が問題となっている千葉県内の 7 か所で、
過去の航空写真を用いて、 30 年間の竹林面積の推移を調査した結果、竹林は増え続け、この 30 年間
で 4.0~ 10.6 倍(平均 6.7 倍)の増加が認められた(図1、写真2)。竹林拡大については西日本を中
心に関東以西の各地で同程度の増加が報告されており、大きな問題となっている。調査を行った地域
は、本県でも竹林拡大の顕著な事例と考えられるが、全県的に竹林拡大は進行していることから、早
急な対策が必要である。
〇農林水産技術会議技術指導資料
平成27年3月「竹林拡大を防ぐ--放置竹林対策の手引き--」P2
https://www.pref.chiba.lg.jp/lab-nourin/nourin/documents/chikurinkakudai.pdf
より引用

(2 )未活用竹林の状況
近年の全国における竹林面積の変化をみてみると,平成 7年の152千 haから平成 14年には 156千 haへと明らかに増大している(表… 316))。昭和 30年代から 40年代にかけて全国的に起こったマダケの開花枯死による影響聞や,かつて都市周辺の農村地域に多く存在していた竹林が開発により伐採されその面積を減少さ
せている地域がある にもかかわらず,全国的にその面積は拡大していることがうかがえる。一方,近年の全国における竹を素材とした林産物生産量の変化は,竹材生産量が平成 7年の 3,941千束から平成 14年の 1,477千束へと, またタケノコ生産量が 57,083トンから 35,178トンへと大きく減少している(表-3)。このこ
とから,全国的にみて竹林の面積は増大しているが竹の活用量は
減少しており,米活用の竹林が増えていることが推察される。
〇ランドスケープ研究 掲載ページp.735-740 発行2009年3月
竹林活用を基調とした地域景観の保全に資する地域類型に
関する基礎的研究 P5
https://agriknowledge.affrc.go.jp/RN/2010772650.pdf
より引用

環境省の自然環境基礎調査の結果(植生図)から、1970 年代末~ 1990 年代末の竹林
の分布と面積を表してみると、この約20年の間に竹林の面積は3倍以上に増大していた。
 「植生図(環境省)から作成した香川県における竹林分布と面積の変遷」
〇2010.2 森林科学 P8-9「特集6-7「モウソウチクは里山林の炭素吸収・貯蔵
および有機物分解にどのような影響をもたらしうるか?」
https://www.forestry.jp/publish/ForSci/BackNo/sk58/58.pdf
より引用

—-

竹林拡大の主な要因は

1)タケノコ、竹材の利用が少なくなってきたこと
2)林業の衰退から森林の管理が行われなくなった
といわれ、
竹林拡大して「竹やぶ化」すると、

・周囲の樹木を竹林化させ、土砂崩壊、生物多様性の低下を招く。
・イノシシ等の餌場、隠れ場所となり、住宅への危険を招く。
ことになり、いつしか「竹害」ともいわれるようになっています。

農林水産技術会議技術指導資料
平成27年3月「竹林拡大を防ぐ--放置竹林対策の手引き--」
https://www.pref.chiba.lg.jp/lab-nourin/nourin/documents/chikurinkakudai.pdf
P2(2 放置竹林対策の目的より)

ただ、竹林拡大の影響について
「対策の重要度の判断が難しい」という面でも「厄介者」扱いされている
状況のようです。
(2010.2 森林科学 P5 拡がるタケの生態特性とその有効利用への道
なぜ厄介者扱いされるのか?より)
https://www.forestry.jp/publish/ForSci/BackNo/sk58/58.pdf

竹材の利用を増やす施策あれこれ

竹の利用を増やすことが「竹害対策」にもなるため、新たな活用方法を見いだし、企業と自治体が一緒になって、産業化しようとする動きが生まれています。

〇竹パウダーでコンポストや飼料に

・コンポスト事例

竹には乳酸菌があり、パウダー状の竹をビニール袋に入れておくと発酵してぬかのようになり、
そこに生ごみをいれるとコンポストと同じく、分解されて堆肥(たいひ)になります。

静岡市では、ごみ問題と放置竹林の2つの問題に関心を高めてもらうことを目的として、
竹パウダーをコンポストにする取り組みを案内。竹粉の講習会も行っています
(静岡市 環境局 ごみ減量推進課 ごみ減量・リサイクル推進係)
https://www.city.shizuoka.lg.jp/790_000020.html

日野市では生ごみリサイクルサポータ―と一緒に開発したダンボールコンポストセットを販売
https://www.namagomi-heraso.com/cardboard-compost/

・飼料事例

都城市が市民から放置竹林に関する相談を受付け、竹林の無償伐採・搬出、サイレージ化を
民間企業が行い連携しています。
林野庁 竹を活用した肥・飼料化等に係る取組事例(令和2年7月調査)より
https://www.maff.go.jp/j/chikusan/sinko/lin/l_siryo/attach/pdf/ecofeed-109.pdf

豚は好んで食べ、豚舎の臭いが軽減されるなどの効果があるといいます。

都城市高城町などで食肉や総菜など加工品を販売する「観音池ポーク」さんにて2017年より「笹サイレージ」の実用化試験を重ねた結果、豚が好んで笹サイレージを食べること、また豚舎の臭いが軽減されるなどの効果が見られました。
併せて行った肉質分析や食味アンケートにおいても好影響を示す結果を得ることができました。”

竹を原料とした家畜飼料「笹サイレージ」の量産化に取り組む大和フロンティア株式会社より引用
https://www.yamato-frontier.co.jp/about

農林水産省によると(令和3年9月 飼料をめぐる情勢 畜産局飼料課 P5より)
https://www.maff.go.jp/j/chikusan/sinko/lin/l_siryo/attach/pdf/index-680.pdf
国内の飼料自給率は、令和2年度(概算)の飼料自給率(全体)は25%と低く、輸入に依存。
純国産の畜産物の実現に向けて、利用していく価値がありそうです。

〇竹の紙、バイオマス燃料などまだまだある!多様な用途!
近年の竹の利用は、竹材をパルプ化して竹の紙の製造、バイオマス燃料など
竹を活用して自治体と企業がタッグを組んだ取り組みが行われています。

林野庁 竹の利活用推進に向けて(平成30年10月)
P16 2 近年の竹の利用より(1)パルプ(2)バイオマス燃料
https://www.rinya.maff.go.jp/j/tokuyou/take-riyou/attach/pdf/index-3.pdf

新しく製品化、産業化するには、コスト面の課題もあるようですが、
竹の活用方法は多様性に富んで、新たな産業として持続可能な社会にしていくひとつとして期待がもてます。
何でも貴重な資源として、「役立てる」知恵を絞れば、必ずいい展開ができるのでは思わせてくれます。

編集部

TSUNAGOOD編集部です。サイト編集・運営を担当しています。

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