「バイオプラスチック」は環境にやさしいか
数年前から、レジ袋が有料化されたり、ファミリーレストランからプラスチック製のストローが撤去されたり、コンビニやフードデリバリーでプラスチック製のカトラリーが排除されたりするなど、環境保護という枠組みの中では一般的に「プラスチック=悪」と捉えられているようです。
確かにプラスチックは、環境に入り込んだ場合には汚染物質となり、環境に対して悪影響を及ぼすものです。また、プラスチックは有限な化石資源を原材料としているため、資源の保全の観点から見ても、プラスチックの使用量を減らすことが環境保護につながるのは間違いありません。
とは言え、現代の生活においては、プラスチック製品をすべて排除するというのは現実的ではありません。そこで注目されるのが「バイオプラスチック」です。
通常のプラスチック製品をバイオプラスチックに替えた、というだけでも環境に配慮している印象がありますね。
しかし、バイオプラスチックは万能な解決策ではなく、実はマイナスの側面も持ち合わせています。これは、2018年の時点ですでに、ナショナルジオグラフィック誌で指摘されています。
ではまずここで、「バイオプラスチック」とはそもそもどういったものなのかについて整理しておきましょう。
環境省の資料では、「バイオプラスチックとは、植物などの再生可能な有機資源を原料とするバイオマスプラスチックと微生物等の働きで最終的に二酸化炭素と水にまで分解する生分解性プラスチックの総称」と定義されています。
つまり、「再生可能なバイオマスを原料とするプラスチック」と、「生分解可能なプラスチック」の両方を総称して「バイオプラスチック」と呼んでいるということです。
ここで注意が必要なのは、バイオマスを原料としたプラスチックでも、生分解しないものもあれば、化石資源を原料としたプラスチックの中にも生分解可能なものもあるという点です。
私はこれまで、バイオプラスチック=生分解可能だと考えていましたが、それは誤りでした。
詳しい分類は、環境省のこちらのページをご参照ください。
さて、バイオプラスチックの定義が分かったところで、そのメリットとデメリットを詳しく見ていきたいと思います。
まずメリットは、先にも述べましたが、再生可能なバイオマスを原材料として製造できることと、最終的に二酸化炭素と水に分解されることで、環境を汚染しないことです。
では、デメリットは何でしょうか?
まず指摘されるのが、本来食糧となる作物の栽培に利用できる土地をバイオプラスチックの原材料となる植物の栽培に転用することにより、食糧不足の一因となり得るという点です。この点については、バイオプラスチックのメーカーが責任のある原材料調達を行うようにしていかなければなりません。
次に懸念されるのは「生分解可能」という言葉の落とし穴です。生分解可能なプラスチックは、微生物などの働きで最終的に二酸化炭素と水にまで分解可能な性質を持ちますが、そのように完全に分解されるには、高温の条件が必要だったり、長い年月がかかったりするものも少なくありません。
また、肉眼で見えないほど細かく分解されたとしても、最終的な「水」と「二酸化炭素」にまで分解されていない状態であれば、バイオプラスチックといえどもマイクロプラスチックとして環境を汚染することになってしまいます。
どうやら、「バイオプラスチックだから環境にやさしい」というのは、必ずしも正解ではないと言えそうです。
バイオプラスチックも含めたプラスチック製品を購入したり使用したりする際には、これらの点を踏まえ、他にもっと良い代替品がないかということも検討しながら、環境に配慮した選択をしていきたいと思います。
・備考:
UnsplashのSeth Cottleが撮影した写真
https://plastic-circulation.env.go.jp/
https://natgeo.nikkeibp.co.jp/atcl/news/18/111900500/