Profile

株式会社アカルク
代表取締役社長
堀川 歩
(AYUMU HORIKAWA)

株式会社アカルク 代表取締役社長 堀川 歩

1990年 大阪府大阪市生まれ。 女性の身体で生まれ、物心がついた頃から心は男性と自覚していたトランスジェンダー。

高校卒業後に地雷撤去をするため陸上自衛隊に入隊。 しかし性別の問題に阻まれ、任期満了後に世界一周の旅へ。 帰国後に個人でLGBTの方に向けた総合サポート事業を設立。

その後、ユニバーサルデザインのコンサルティング会社を経て、現在は多様な人が働きやすい職場作りの人事コンサルティング、トランスジェンダーに特化したキャリア支援事業を中心に行う。 大和ハウス工業株式会社の LGBT 活躍推進アドバイザーとして顧問を務める。

地雷撤去から生まれた挫折と新たな出会い

どのような経緯で現在の活動に至ったのか、どのような想いがあったのかをお聞きしました。

現在の事業に至るまでの経緯について

プロフィールでは自衛隊の任期終了後から世界一周をされ、帰国後すぐに事業を立ち上げられていますが旅行中に何かきっかけとなることがあったのでしょうか?

堀川さん:

高校時代に転機となる人と出会い、地雷撤去したいと自衛隊に入りましたが性同一性障害の診断書を提出後、条件付き採用に切り替わり、結局、地雷撤去に関わることはありませんでした。
それから世界一周の旅に出てどのような方向に向かおうか悩んではいました。
旅の後半になって、行政書士さんとのご縁もあって、自分と同じく悩んでいるLGBTQの人をサポートしようと思うようになり、21歳で事業を立ち上げました。

事業を立ち上げた後に、ユニバーサルデザインのコンサルティング会社に入社されたのはどうしてでしょうか?

堀川さん:

自分だけの力に限界を感じ、もっと社会に対して大きなアプローチをしたいというのがまず大前提でした。

もう1つは、講演を行った時に思ったのが、LGBTQというテーマに対して、その中だけでやるというより、もっと大きな観点から取り組む必要があるんじゃないかなと。
今であればダイバーシティなど、言葉で認知されていますが、当時はまだ、どんな形の概念なのかという認識がほぼありませんでした。
その時に、ユニバーサルデザインのコンサルティング会社で、国籍、性別、年齢、商売も関係なく、全ての人という概念の中で、「ここで自分が今までやってきたことをやると広がる」のではないかと。
まだLGBTQはそんなにやっていたわけではないので、自分が入ることによって会社にとってもプラスになり、私としても広げていけるという思いがありました。
履歴書ではなくて提案書を持っていったんです。
こんな形で一緒にできませんか?と。ビジョンに対する提案と、事業計画に関する提案を2つ持っていったところ、ぜひ一緒にしましょうということで、入った形になります。

人のために何かをするなら自分の力をつけないと。

こちらで現在の事業につながる人事に携わることになったんですね?

堀川さん:

当初はLGBTQの事業を広めるように、講師としても活動を続けてはいたのですが、
私が入った当時、10人ぐらいからだんだんと組織のフェーズが増えてきました。

多様な人が働きやすい環境を作りたいなと思い、経営陣に人事部を作ったほうがいいのではないかと提案をし、人事に関わることになります。
私も人事が何の仕事かもわからない状態だったので、外部のプロフェッショナルの人たちについてもらって、ちょっとずつち形を作っていきました。ちょうど在籍したのは5年です。

未経験の仕事を手探りで進められたんですか?

堀川さん:

世界一周の時もそうでしたが、勢いや想いだけでは地雷撤去できるかというと当然できるわけもなく、その時にやっぱり自分の力、知識とかを身につけないと、人に何かしたいと思っても何もできないということを感じていました。

やりたいことがあった時には、自分でできることを増やさないといけないということもあったので、人事のときは自分で手探りでやるというよりは、イロハを教えてもらって、それをまた社内で実践、というのをしていました。

元々やっていたLGBTQの事業と人事でつけた学びが、社内で実践できるという、トライアングルが揃っていた状況だったのと、かつ、世の中が多様性の取り組みをやっていきましょうという方向性になり、求められる声が増えたので、それが価値提供できるようになっていったことによって、意図したわけではなかったですが、今の事業に繋がったというのはあります。

強みとなった、トランスジェンダーに対応できる人事コンサルティング

現在の事業内容について教えてください

堀川さん:

一言で言いますと、社外ダイバーシティ担当、という風に表現しているんですけど、いろんな業界業種の企業様のダイバーシティ推進を広めていくという取り組みです。

アドバイザーという形で名刺を持たせていただいている企業様もあれば、外部のコンサルタントとしてのアドバイザーみたいな形で入っています。その中で何をやっているのかというと、シンプルにやっていることは3つになります。
1つがトレーニング事業
これは研修の領域で、大体年間100本ぐらいは今もずっとやっているというような状況です。今はオンラインが多いです。

2つ目にプロデュース事業

ここが私たちの強みになるのですが。 企業側のプロデュースについては人事コンサルティングになります。例えば企業の扶養制度。異性婚の方であれば、税金の控除や、家族手当を受けられるなどがある中、同性同士は受けれなかったりするので、その規定を特別じゃなくて同じようにできるような選択肢を設けたりするなどです。
 
一方で、トランスジェンダーの人が手術するとなるとお休みを少しいただいたり、LGBTQの人が働きやすい制度整備というところなどをまず1つやらせてもらっています。
就業規則などお預かりしながら、人事の方と一緒に社内プロジェクトとしてやるということもあれば、トランスジェンダーの人のキャリア支援の相談にものらせてもらったりもしています。
 
最後がユニーク事業。
やはりこうした性の多様性に関することというのは、今まで、私も研修とかでお伝えするというのをずっとやっていたのですが、もっと身近に楽しく知ってもらいたいという思いで行っています。
例えば、過去にあったイベントで「アカルク筋トレ」というのがありました。
トランスジェンダーの方は体に関しても、コンプレックスを持っている人も多いため、
トランスジェンダーのプロのトレーナーの人を3人お呼びをして、全国でも無料で誰でも受けられるようなことをしました。
 
昨年はサッカーのクラブチームと一緒にSDGsチャリティーマッチを開催し、ゲストに当事者で活躍しているタレントや歌手の方をお呼びし、集まった協賛金の一部を当事者団体に寄付しました。他にも街づくりの観点からダイバーシティを楽しみながら進めていこうということで、企画や各種サポートなども行っています。
 
東京ビッグサイトのDXPO(ディーエクスポ)という人事関連のイベントに、自社でリリースした、LGBTQのe-ラーニングを出展する新しい取り組みもあります。
 

▲SDGsチャリティーマッチの様子

「知る」「変える」「広げる」のステップで一緒に取り組む

どういったご相談やご要望が多いのでしょうか?

堀川さん:

企業様の状況によっても違いがあります。 基本的には、ご提供させてもらっているものが「知る」「変える」「広げる」という3つのステップの中でご一緒に取り組みをしています。

 
やはり、最初はどこの企業様も「知る」のフェーズ゙、現状課題が何かを知るところが重要です。
LGBTQに関して何も取り組みをしていない、社内の問題が何かもわからない、というところが結構、出発点であったりします。
そこに対して意識調査をさせていただき、職場内の課題が何かということを引き出していきます。
例えば結婚式場であれば、申し込み用紙ひとつでも「新郎新婦」となっているものを「お名前」に変えたり、プライダルローンも異性間でしか作れないなどがあります。
保険業、不動産業によっても違うので、企業様ごとに洗い出しをさせていただいて います。
 
単発スポットで「ちょっと社会貢献」で終わってしまうと、企業として続くことができないので、その社会性と経済性の両輪を伴わせるために、中長期の2~3年の、事業計画みたいなものをつくらせていただいて、
そこから、まずは調査で決定できた結果と、プラス意識を変えていく人事や管理職に対して研修を行っていくというようなことをしています。
 
次に「変える」ですが、この「知る」は形を変えながら、継続していくことが重要になりますが「変える」に関しては、知っただけであまり変化が組織としてなかったりするので、次に人事制度など、多様な人が働きやすい職場のガイドライン整備などもしております
 
あとは匿名で相談できる相談窓口です。社内でその制度を使おうと思っても自分のことがバレるとなると「言いたくない」。 となるので、私たちのような外部の機関に相談してもらい、その人が特定されないように、どういう課題があったのか、どういう風に変えていくのがいいのかなど、間にはいって変えていきます。
 
最後の「広げる」っていうところに関しては、先にお話ししたイベントや、社員を巻き込んだもの。 社内の中でもちょっと楽しめるイベント作ったり。お客様に対しては、企業様のフェーズと状況に合わせて提案していきます。単発というより長期的にお手伝いさせていただくところが多いです。
 

社会課題を面白く解決していく。0からプラスへ

最終的な展望は何かありますか?

堀川さん:

今、一言で何の会社かいうと、人事コンサルティングの会社になるんですけども、 どちらかというとプロデュースのクリエイティブな会社にしていきたい思いがあります。

今は、企業の中でマイナスになっていることを0(ゼロ)にしていくことを、意識啓発にしても、制度に関してもしているのですが、ユニーク事業に関しては、0(ゼロ)からプラスにしていく部分です。
 
比率で言うと、圧倒的にマイナスを0(ゼロ)にする方が需要が高く、
0(ゼロ)に揃った企業様がようやくやり始めているフェーズ感です。
ゆくゆくは、プロデュースをしたり、クリエイティブ会社にしてきたいという思いはあります。
「社会課題を面白く解決していく」
そんな会社にしていきたいというのが全体のビジョン。今はその手段として人事制度を整備したりしていますが、クリエイティブな方法で解決できるようなそんな会社にしていきたいというのが、ビジョンと事業に関して紐づいている状況です。

最後に関心のあるSDGs、社会課題などはありますか?

堀川さん:

もともと1番最初、何かしたいというのが地雷撤去から始まっているので、国際協力みたいなところに関しては、ずっと自分の中では何かアプローチしたいというのはあります。

 
もうひとつは、今も色んな団体さんと連携していますが、キャリアに関してはすごく関心があって、特に高卒や中卒のキャリア支援に関して非常に関心があります。
ただ、あっちもこっちも今は手を出せないので、積極的に、学校に講演など行くようにしたり、通信制高校など特化したキャリア支援をする団体さんと連携して、法人としても寄付したり。支援団体さんの保証会社みたいなことをしたり、できることはやっています。
 

社会課題に関心のある方へメッセージがあればお願いします。

堀川さん:

実は起業当初のころとちょっと変わってきたところ、自分でも驚いているのですが。 今までどちらかというと「社会課題を解決するんだ!」「この目標のために」というような、肩に力が入った状態が強かったのですが、最近、Z世代と言われてる子供たちと一緒にプロジェクトをすることが増えて、すごくいい意味で、みんな肩の力を抜いていて、いいなと思うことが増えてきました。

 
私自身もすごく思い込んだり、自分はこうしないと、という気持ちが結構強かったんだろうなと。 もちろんそういった思いでやっているんですけども、どちらかというと、今は先ほどのちょっとクリエイティブな時期に繋げてみたい。解決する形は何でもありで面白い、こんなのがあったんだみたいな。
楽しむスタンスで知ってもらえる方法でいきたいというのがあります。
両方大事なんですけれども、比率が変わってきているなと思います。
多分、事業と一緒に成長していくところだと思っていますね。

▲研修や講演など状況に合わせた内容を行っている

株式会社アカルク
https://akaruku.co.jp/

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編集部

TSUNAGOOD編集部です。サイト編集・運営を担当しています。