食品ロス問題を放置すると・・。世界各国の食品ロス対策もご紹介
〖食品ロス〗とは、まだ食べられるのに捨てられてしまう食べ物のことです。 毎年、世界では約13億トン(※1)、日本でも約612万トン(※2)もの食べられるはずの食材が廃棄されています。
(※1)食料生産量の3分の1 (※2)東京ドーム5杯分、1人お茶碗1杯分/日
日本の食品ロスの2大原因 |
①事業系食品ロス(328万トン)
スーパーやコンビニなどでの売れ残りや飲食店での食べ残し、売り物にならない規格外品など
②家庭系食品ロス(284万トン)
家のごはんの食べ残しや食材を買ったのに使わず捨ててしまったり、皮などのむき過ぎ(過剰除去)で出る生ゴミなど
日本の食品ロスだけで、食べられなくて困っている人々への世界の食料支援の1.2倍にあたるそうです。こうした「食の不均衡」を解決するためにも食品ロス対策に積極的に取り組まなければなりません。
食品ロス問題を放置すると、どうなる? |
■環境悪化
ロスとなった食べ物は可燃ゴミとして処分されますが、運搬や焼却時にCO2が排出されます。生ゴミの重量の約80%が水分と言われており、水分が多い生ゴミは重たいので運搬時にゴミ収集車の燃料をより多く使い、燃えにくいため焼却時にもより多くのエネルギーが必要になりCO2排出もその分多くなります。世界で排出されるCO2の約10分の1(8~10%)は食品ロスが原因といわれています。焼却後の灰の埋め立ても環境負荷につながりますよね。
■将来の人口増加に伴い栄養不足や飢餓が増加
今世界では約77億人が生活していて、そのうち8億人以上が栄養不足で苦しんでいます。そして今後2050年ごろには、今より人口が20億人も増えて約98億人になると言われています。現時点で多くの人たちが飢餓や栄養不足で苦しんでいるのに、このまま何も食品ロス対策をせずに過ごしていると、人口増加に伴い栄養不足や飢餓で苦しむ人がますます増えることになります。
世界各国の食品ロス対策 |
■アメリカ
・ U.S. Food Loss and Waste 2030 Champions
食品廃棄物や食品ロスを2030年までに50%削減する目標を政府が掲げ、賛同する企業を募集。この集まりを「U.S. Food Loss and Waste 2030 Champions」と呼びます。ここに参加するには、削減目標を掲げ、そのための行動を約束しなければなりません。
例)
①ケロッグ
原料に使う果物は多少形が悪くても使用
②ウォルマート
商品の販売予測や売り方の研究に力を入れ、仕入れた商品をすべて売り切ることに尽力。それでも売れ残ってしまった商品はフードバンクやチャリティに寄付したり、食べられなくなったものは動物のエサやバイオマス発電の燃料に。
・to go box(外食時の食べ残しを持ち帰るための容器)の導入
■フランス
・食品廃棄禁止法の制定
大型スーパーに対して売れ残りや賞味期限切れの商品の廃棄を禁止。売れ残った食品は寄付や飼料・肥料にして再利用することを義務付け。廃棄量にあわせて罰金が徴収されることに。
・慈善団体がフードバンクネットワークに登録
フランス全土で5000以上の慈善団体が登録しています。
・生ゴミ専用のゴミ箱を設置
パリに設置。集められた食品廃棄物は農業用肥料やバイオ燃料に変換。
・廃棄物防止法の制定
飲食店の食品ロス対策度を審査し、食品ロス対応度を3段階で評価。評価がわかる「食品ロス反対ラベル」が付与され、評価された飲食店は店頭やメニュー・ウェブサイトで表記できるように。
■デンマーク
・賞味期限切れ食品専門のスーパーのオープン
賞味期限切れだけでなく包装に傷や汚れがあるものも販売されており、最大半額の料金で商品が売られています。
■スペイン
・連帯冷蔵庫の設置
一般家庭や飲食店から出る余剰食品をこの冷蔵庫に入れ、必要な人は誰でも持ち帰ることができるという仕組みです。冷蔵庫の中身はボランティア団体により定期的にチェックされます。
■オーストラリア
・OzHarvest Market(オズハーベストマーケット)の設立
ボランティアにより運営されている廃棄食品を救うために設立されたスーパー。廃棄直前の食品が集められ店頭に並びますが、これらの商品には値札がなく、買い手が自分で値段を決めることができるようになっています。本当にお金に困っている人は無料で食材を受け取ることができますが、余裕がある人はその気持ちを値段にして支払う仕組みになっています。売り上げは運営するボランティアの活動資金となり、オーストラリアの食料問題を解決するために使われます。
まとめ |
日本でもフードバンクの設置や食品ロス削減アプリの普及などさまざまな食品ロス削減対策が行われていますが、食品廃棄に対する罰金の制定や廃棄食材専門のスーパーのオープンなど、世界各国には食品ロスに対する危機感を強く感じる、参考になる対策がたくさんあることが分かりました。
日本では衛生面や商習慣などにより海外のような目立った施策を取り入れることが難しいようですが、ひとりひとりが食品ロスに対する意識を高め個人でできる取り組みを行いつつ、日本の賞味期限設定などの厳しいルールを打開し世界各国のような大きな施策を行うことができたら、食品ロス問題の解決に近づく大きな一歩となると感じました。