先進国の医療が抱える認知症2024
こんにちは。SDGsを経済的な観点から捉えていて記事をUPしています。eSです。
アルツハイマー型認知症と診断された患者の約4割に誤診の可能性があることが最近の研究で分かってきたそうです。日本における65歳以上の認知症の人の数は2020年の発表では推計で約600万人。今後も高齢化が進むにつれて認知症患者は増加し、2025年には約700万人(高齢者の約5人に1人)が認知症になると予測されています。
約4割という数字で計算しただけでもかなりの人数の方が、誤診でアルツハイマー型認知症だと診断され、本人もご家族もそう思い込んで生活しているのかと思うと、早急に対処を願いたいところですが、未だに、それを見極める有効な検査技術が確立していないのも現実です。
認知症といっても原因や症状が異なり、いくつか種類分けもされています。その中でもっとも割合が多く、全体の70%近くを占めるといわれているのが脳の神経細胞にアミロイドβというたんぱく質がたまり、神経細胞を破壊するため、脳が委縮することで発症する病です。
アミロイドβが蓄積される原因については、加齢や遺伝が影響するとされていますが、最新の研究では、糖尿病や高血圧の人はアルツハイマー型認知症になりやすいことが明らかとなっています。予防には生活習慣の改善が重要であることが改めて指摘されました。
アルツハイマー型認知症に次いで多く、認知症全体の約20%を占めるのが、血管性認知症です。
脳梗塞や脳出血などの脳血管障害によって脳の血液が阻害され、脳の一部が壊死することで発症します。レビー小体という神経細胞にできる特殊なたんぱく質が脳にたまり、神経細胞を破壊することで発症するのがその名の通りレビー小体型認知症です。特殊なたんぱく質が脳にたまる原因は、いまだ解明されていません。脳の前頭葉や側頭葉が委縮して起こる認知症が前頭側頭型認知症です。性格が極端に変わったり、万引きや悪ふざけなどの反社会的な行動が増えたり、柔軟な思考ができない、身だしなみが無頓着になるなど…衛生面の管理ができない等の症状が現われるのが特徴です。今のところ分かっている原因としては、脳にピック球という異常構造物がたまって発症するケースと、TDP-43というたんぱく質がたまって発症するケースがあるということです。
しかしベテラン医師でも症状がとても似ていることから、この分類分けはとても難しいと言われています。高齢化で認知症は増加を続けるなかで、適切な治療には正確な診断が欠かせないと思います。手軽で信頼性が高い検査技術の開発が必要ですがなかなか難しいとのことです。
今回4割が誤診なのではないかとの発表をしたのが、約3万人分の脳組織を保存する世界最大級の脳バンクを抱える新潟大学脳研究所です。患者計558人の協力の中で、脳脊髄液を分析し、アルツハイマー病の原因物質の蓄積を推定したところ、患者の4割は別の病気の可能性があることが分かったそうです。具体的には、アルツハイマー病と思われた患者さんの中にはレビー小体型認知症の方もいたそうです。発症する原因が違うので、適切に診断できていれば、「苦痛を和らげる対症療法を講じることもできた」と新潟大の柿田明美教授は語っておられます。
寿命が伸びる中で、細胞が新陳代謝を起こすことのない唯一の臓器である脳。そこに対しての治療も急務で進められていますが、何よりも診断結果の信憑性を今後は求められるようにもなりそうです。正しい診断があってこその正しい治療だと改めて感じました。
認知症が身近な家族に発症すると、身の回りのお世話をする人が必要になります。意思疎通が今までのようにいかず、精神的な負担を介護者は抱えます。長生きができる国だからこそ背負う認知症との共存。検査から治療まで今後も大きな飛躍を希みます。