マイピックアップNo. 658

ジビエをお試しください!

「ジビエ」とは、食材とするために狩猟された野生鳥獣やその肉をさすフランス語です。 
ジビエは近年、農林業被害を防止するために捕獲されたシカやイノシシなどを有効に活用する手段として注目されています。  

筆者がボランティアで関わっている田んぼは、稲刈りを目前にしてイノシシによる壊滅的な食害を受け、収穫がほぼゼロでした。私たちは生計のためではなく環境を守るために田んぼを維持しているので良いですが、農業を生業としている方が被害を受けた場合の深刻さは想像以上でしょう。  

イノシシは鼻と牙を使って地面を掘り返し、季節に応じて食べられるものは何でも食べる雑食性です。一度侵入に成功した田畑を餌場と決めて繰り返しやって来たり、危険を感じた場所を記憶して近寄らなかったりする知恵があります。  

生活圏に近いところに生息しているイノシシですが、基本的には臆病で人前に姿を表すことは多くありません。スイカ・稲・芋類など田畑の作物を食い荒らすだけでも困りますが、泥浴びや掘り返しで地面に穴をあけたり畔や水路を崩したりするので厄介です。  

野生鳥獣による農作物被害の影響として、次のことが挙げられます。 

  • 農業を続けていく意欲の減退 
  • 農業を辞める人の増加 
  • 放棄される農地の増加 
  • 希少植物の食害 
  • 山林の下層植生が無くなることによる土壌流出 

 令和元年度のデータでは全国の野生鳥獣による農作物被害額は158億円で、シカとイノシシによるものが6割以上を占めています。  

鳥獣による被害を防ぐための方策は次のとおりです。 

  • 柵の設置などによる侵入防止 
  • 餌場(放置された果樹など)や隠れ場(管理が行き届かない藪など)の撲滅 
  • 計画的な捕獲  

令和2年度のイノシシの捕獲頭数は、被害防止を目的とした許可に基づく捕獲が56万頭で、狩猟による捕獲数の12万頭を大きく上回っています。  

被害防止のためとはいえ、捕獲されたイノシシも命ある生物です。土に埋めたりゴミと同じように処分したりするのではなく、食材=ジビエとして活かすことができればその命を無駄にせずに済むでしょう。 

 ジビエが流通し十分な捕獲頭数が保たれれば、農作物被害の減少が期待できるほか、商品化や農泊・観光など新たなビジネスにもなり得ます。 

 しかし現在、ジビエとして流通しているのは捕獲されたイノシシの1割に過ぎません。きちんと処理されたイノシシ肉は、低温でじっくり焼くと臭みがなく大変美味しい食材です。 

 ジビエといえば大都市圏の高級レストランの食材というイメージが強く、生活の中でより手軽に楽しむには外食チェーンや小売店への展開や便利な加工品の開発が求められます。 

 ジビエを試すチャンスがあれば是非お試しいただき、今後どう社会に浸透していくか注目してみてください。 

 参考:野生鳥獣の被害と利活用  

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