ラッコが絶滅危惧種の理由とは?激減の真実と、海の森を守る「キーストーン種」としての役割

「水族館でラッコを見られなくなるかもしれない。」 このような話を聞いたことがあるでしょうか。
国内のラッコの飼育数は、2025年2月現在、三重県の「鳥羽水族館」にいるメス2頭(メイ、キラ)のみで高齢になっています。最盛期には28館で122頭が飼育されていましたが、1998年に米国が輸出禁止の方針を打ち出し、新規でのラッコの導入ができなくなっています。寿命で亡くなるラッコを補うためには繁殖で増やすしかありませんが、現状では非常に困難です。
ラッコが絶滅危惧種である3つの主要因

ラッコは環境省レッドリストで絶滅危惧IA類(ごく近い将来における野生での絶滅の危険性が極めて高いもの)、IUCN(国際自然保護連合)のレッドリストでEN(Endangered:危機)に掲載されている希少種です。
参照:IUCN(国際自然保護連合)https://www.iucnredlist.org/ja/species/7750/219377647
毛皮目的の乱獲(歴史的背景)
1800年代を中心に毛皮目当ての乱獲により、推定生息数30万頭だったラッコは1900年代初めには2千頭以下にまで激減しました。乱獲のほか、海洋汚染や地球温暖化も生息数減少の一因となっています。
海洋汚染と原油流出事故(環境破壊)
海洋生態系に極めて大きな影響を与えた悲劇、エクソンバルディーズ号原油流出事故(1989年)は、
米国アラスカ州沖で大型タンカーが座礁し、4,200万リットルに及ぶ原油が海に流出。ラッコの個体群に壊滅的な打撃を与え、3,000匹のラッコなどが死亡したといわれます。
海洋汚染というと、このような大きな汚染がのことだと思われがちですが、石油以外に海洋汚染を引き起こす原因は私たちの暮らしの中にもあります。
- 化学物質・重金属
- 放射性廃棄物
- 生活排水
プラスチックや塩化ビニール、塩素化合物が燃焼することで発生するダイオキシン、天ぷら油や合成洗剤による汚染などは私たちの行動により改善されていくものです。
天敵の増加と生息地の喪失(生態系の変化)
ラッコの80%以上がアラスカに生息。天敵(シャチやサメ等)の増加に加え、生息地の汚染問題があります。
毒性藻類(赤潮)の発生はラッコの生息地を汚染、深刻なダメージを与えています。海水温上昇などの環境が、エサとなる貝類やウニの分布に影響を与え、ラッコの食料利用可能性が変化しています。
ラッコ=海の森のガーディアン(守護者)

ラッコは、多くの貝類・ウニ類を食べるため、漁業者から厄介者あつかいされることもあります。しかし、ウニが増えすぎると海藻を食いつくすこともあり、実際にラッコが激減した海域ではウニによる食害で磯焼けが起こり、魚介類の繁殖に悪影響が生じました。逆にラッコが生息する海域では、ウニによる食害が抑制されて海草の森が守られており、二酸化炭素(温室効果ガス)の吸収量の増加にもつながっているのです。
さらに、ラッコが動き回ることで海草の有性生殖が促進され、ラッコがいる海域の方が遺伝子の多様性が高く生態系が安定しているという研究結果もあります。ラッコは生態系の中で海藻・海草類の存続を助け、豊かな海のバランスを整える役割も果たしているのです。
キーストーン種の役割とは?
ラッコは海の森のガーディアンであり、キーストーン種の代表例としても挙げられています。キーストーンとは、「生態学者のロバート・トリート・ペインによって提唱された概念で、比較的少ない生物量でありながらも、生態系へ大きな影響を与える生物種を指す生態学用語(Wikipediaより引用)。」キーストーンという名称は、古代ローマの石橋にはめ込まれていた小さいくさび型の石からきています。橋全体に対して小さな石であっても、これがないと石橋全体が壊れてしまうため、小さくても重要な存在ということを意味します。愛らしい姿のラッコですが、ラッコがいなくなれば、海洋全体に及ぼす影響は計り知れません。
貴重な国内の野生のラッコ
国内にも野生のラッコが生息し観察できる場所があります。北海道浜中町の霧多布岬周辺です。ラッコ目当ての観光客やカメラマンが増えており、浜中町ではガイドラインを作成しラッコを脅かさないよう呼びかけています。野生のラッコを観察する場合には、野生生物との距離をわきまえマナーを必ず守りましょう。
私たちにできること
豊かな海の象徴であるラッコは決して遠いどこかの野生生物ではなく、彼らのすみかである海と私たちの生活は直接つながっています。見ているだけで微笑ましい気持ちにさせてくれるラッコの絶滅を防ぐことは、私たちが何を選択していくかで変わってきます。
MSC認証(持続可能なシーフード)を選ぶ:ラッコの餌となる海洋資源を守ることに繋がります。
プラスチックフリー:誤飲や環境汚染を防ぐ。
保護団体への寄付:世界自然保護基金(WWF)や、ラッコ保護団体へ支援
Friends of the Sea Otterへの寄付について ラッコちゃんねる
SAVE THE RACCOプロジェクト
など海の生きものへの負荷を想像しながら足元から行動を起こしていきましょう。
参考:NATIONAL GEOGRAPHIC ラッコがいると海草が強くなる、アマモの遺伝子が多様化、研究
https://natgeo.nikkeibp.co.jp/atcl/news/21/101800504/
2026年2月加筆










