『あなたは大丈夫?』スポーツの指導現場に求められる発達障害への理解と対応について
スポーツの指導場面において
『なんでこの人は、同じ失敗を繰り返すんだろう…』
『あなたの今の行動は理解できないよ』
と感じたり、思わず口にしたことはないだろうか?
特にチームスポーツでは、このような行動をする選手が非難の的になることも少なくない。
では、目の前で起こっている選手のおこないは、本当に悪意や怠慢、本人のわがままなどによるものだろうか?
周囲からはネガティブと捉えられる行動をした本人が、その行動を無意識にとったものであるとしたらどうだろう?
そこには『発達障害』という障壁への我々の理解不足が挙げられるのかもしれない。
この記事では
- 『発達障害』とは?
- スポーツ指導現場における『発達障害』への理解と対応
について考えていきたい。
発達障害とは
まず、発達障害とは
『脳機能の発達に異常があり、周囲の環境、人間関係などにおいて社会生活上の支障が出る障害』
と定義されている。
発達障害の種類および特徴として以下があげられる。
- ASD(自閉症スペクトラム症):特定の行動を繰り返す、対人関係が困難など
- ADHD(注意欠陥性•多動性障害):忘れ物が多い、静かにしていられない、集中できないなど
- LD(学習障害):読み書き、聞く、話す、計算、推論などの分野において著しく苦手なものがあるなど
このような障壁を抱えている選手は、たびたびスポーツ現場においても周囲から理解されず、非難の的になることが少なくない。
非難の対象となった選手(特に小学生などの年代)は、運動に対する意欲を無くしてしまったり、強い怒りを感じてトラブルを引き起こすこともあるという。
我々指導者はトラブル回避という観点からももちろん、本人のスポーツの機会を確保するためにも発達障害という障壁を抱える選手に対しての理解と指導方法を模索していく必要がある。
では、その対応の方法としてどのようなことがあるのかを以下で述べていきたい。
指導現場における発達障害への理解と対応について
ここでは、発達障害をもつ選手への対応の方法としてどのようなことがあるのかを以下で述べていきたい。
発達障害に関する知識を身につける
1つ目は発達障害の知識を身につけることが必要である。
障害に対する知識がなければ、目の前で起こること(例えばその場では予測されない行動をとるなど)に対して理解をすることができない。
また、人によって障害の特性が異なるので、起こることは同じ事象ではないことも多い。
知識を身につけ指導現場で経験を積むことで、予想外のことが起こった時に障害を疑うことができ、その対応の方法も変わってくるだろう(すぐに発達障害を疑う必要があるということではないことは申し添えておく)
傾聴の姿勢をもつ
2つ目は『傾聴』の姿勢をもつということ。
『傾聴』とは
主にカウンセリングの手法の1つとして用いられ、相手の話を否定することなく、共感的に理解しようとする聞き方のこと。
例えば、ある選手が急にパニックに陥り他の選手に攻撃を加えた場合、その攻撃に対して注意をするのではなく、その攻撃に陥るまでのプロセスや感情の変化などを丁寧に聴き取ることが大切だ。
傾聴の際のポイントとして
- 受容の姿勢:最後まで口を挟まず話を聞く。
- 話を促す:相手の話に興味をもち、相槌などを打ちながら話しやすい関係性を築く。
- 理解する:相手の言語化しにくそうな内容を代わりに言い換えて、理解するよう努める
このような『傾聴』の姿勢をもって選手と関係性を築くことで、選手は自分が行った行為に対して客観的な視点で振り返ることができ、内発的な改善が期待できるだろう。
まとめ
今回はスポーツの指導現場に求められる発達障害への理解と対応について述べてきた。
私たち指導者は、スポーツ指導現場において、発達障害をもつ選手がいるということを常に念頭において指導に当たる必要がある。
また、発達障害をもつ選手がより良くスポーツを行う環境を確保するために、知識だけではなくコミュニケーションの手法(傾聴の姿勢)などを身につけておくことが重要だ。
この記事の内容が、日々研鑽を積んでいる指導者の参考になれば幸いである。