スポーツで広がる持続可能な観光のカタチ:体験型観光の進化と課題
観光業は、持続可能な地域社会を実現するために大きな役割を果たすと期待されています。特に、スポーツを取り入れた体験型観光は、観光客の満足度を高めるとともに、地域社会や環境に配慮した新しい観光モデルとして注目されています。
近年、訪日外国人観光客の増加や若者の価値観の変化により、観光は「見る」から「体験する」スタイルへとシフトしているのがその要因の1つです。
本記事では、スポーツ観光の成功事例と、持続可能な観光モデルを構築するために解決すべき課題を探ります。
成功事例:サイクリングと海洋アクティビティでの相乗効果
しまなみ海道は、瀬戸内海の島々を結ぶサイクリングロードで、国内外から「サイクリストの聖地」として認知されています。
年間15万人以上のサイクリストを迎え、そのうち約3割が地元の海洋アクティビティも体験しています。
しまなみ海道を訪れる観光客の平均滞在時間は、サイクリングや海でのアクティビティを組み合わせることで従来の4時間から1.8日まで延び、地域経済に大きな効果をもたらしました。
しまなみ海道が成功している背景には、地域全体での観光客を受け入れる取り組みがあります。
宿泊施設の充実や地元の漁師と連携したシーカヤックツアーの提供など、地域の人々が参加する形で観光が成り立っていることが強みです。
また、この5年間で20代・30代の若者移住者が増加し、多くがアクティビティインストラクターとして地域に貢献しています。
地元住民が主体となり、持続可能な形で地域資源を活用している点は、他地域へのモデルケースとなっています。
持続可能性の課題と解決に向けた動き
一方で、観光客の増加に伴い、環境負荷が問題となるケースもあります。沖縄県恩納村では、増加するダイビング客がサンゴ礁に与える影響が深刻化し、2022年から入域制限が導入されています。
こうした制限は、持続可能な観光を実現するための重要な手段として、訪れる人々に自然環境への配慮を促しています。
静岡県熱海市では、サイクリングコースと一般道が交差するエリアでの事故が増加し、安全対策が求められています。
また、神奈川県葉山町では、マリンスポーツ事業者とサイクリング団体が協力して安全認証制度を確立し、活動エリアのゾーニングや利用時間の分散化を図ることで、地域住民と観光客の共生を目指しています。
未来に向けた持続可能な観光の構築
マリンスポーツやサイクリングを取り入れた体験型観光は、地域の活性化に貢献しつつありますが、持続的な発展のためにはさらなる課題解決が求められます。
今後は、観光客の満足度を維持しながら、地域の自然環境や文化を守るための取り組みが不可欠です。
各地域の成功事例や課題解決のための知見を共有し、SDGsの理念に沿った観光モデルを構築していくことで持続可能な観光のカタチが構築されていくことでしょう。