海水浴だけじゃない!日常的な日焼け止めや洗顔を見直して海の環境を守ろう

皆さんは日焼け止めを選ぶとき、何を基準にしていますか?SPFやPA値、使用感、価格…さまざまな要素がありますが、最近では「リーフフレンドリー(Reef-friendly)」という言葉を耳にする機会が増えました。
これは「サンゴ礁に優しい」という意味で、特定の日焼け止め成分が海洋環境、特にサンゴ礁に深刻なダメージを与えることがわかってきたからです。
なぜ日焼け止めが海を汚染するの?

日焼け止めの多くには、紫外線を吸収して肌を守る紫外線吸収剤(Organic UV filters)が含まれています。しかし、これらの化学物質が、海水浴や汗、シャワーなどを通じて海に流れ込むと、サンゴの白化や発育阻害を引き起こすことが指摘されています。サンゴは海洋生態系の土台であり、多くの魚や海洋生物の住処となっています。サンゴ礁が失われることは、海洋全体の生物多様性の危機に直結するのです。
【代表的な規制成分とその影響】
- オキシベンゾン(Oxybenzone):サンゴのDNAに損傷を与え、幼生の奇形や白化を引き起こすことが示されています。
- オクチノキサート(Octinoxate):これもサンゴの白化を促進する原因とされています。
- 4-メチルベンジリデンカンファー(4-MBC):サンゴの成長を妨げ、白化を加速させる可能性があります。
- エンザカメン(Enzacamen):欧州を中心に規制されている成分で、内分泌かく乱作用が疑われています。
これらの成分は、サンゴだけでなく、藻類や魚、イルカなど、さまざまな海洋生物に悪影響を及ぼす可能性が指摘されています。
規制は世界的な動き
環境保護への意識が高まるにつれ、特定の紫外線吸収剤の販売や使用を規制する国や地域が増えています。これは、美しいサンゴ礁や海洋生態系を守るための緊急措置として実施されています。
【規制を実施している国・地域】
- ハワイ州(アメリカ):2021年1月1日から、オキシベンゾンとオクチノキサートを含む日焼け止めの販売を禁止しています。
- パラオ共和国:2020年1月1日から、上記2成分に加えて、4-MBC、エンザカメンなど10種類の紫外線吸収剤を禁止。違反者には罰金が科せられます。
- タイ:2022年8月より、国立公園内でのオキシベンゾンなど4成分を含む日焼け止めの使用を禁止。
- フロリダ州キーウェスト(アメリカ):2021年1月から、オキシベンゾンとオクチノキサートを含む日焼け止めの販売を禁止。
- メキシコ:一部のリゾート地や海洋保護区で、生分解性の日焼け止めのみの使用を義務付けています。
- カリブ海のアルバ島:2020年からオキシベンゾンを含む日焼け止めの販売を禁止。
これらの規制は、海洋環境保護の国際的な潮流を示しており、消費者一人ひとりの選択が大きな影響力を持つ時代になってきています。
日常の何気ない行動が、海を汚している?

ここまでは、海水浴などで直接海に流れ込む日焼け止めの影響について見てきました。しかし、日焼け止めによる海洋汚染は、ビーチやプールサイドだけで起きているわけではありません。
実は、日常生活の中で行っている、メイク落としや洗顔の習慣も、間接的に海洋汚染につながっているのです。
皆さんが日焼け止めを落とすとき、どうしていますか? クレンジングや洗顔料を使って、洗面台やお風呂場で洗い流しますよね。その洗い流された水は、どうなるのでしょうか?
日本の一般的な下水道システムでは、家庭から排出された生活排水は、下水処理施設に集められます。そこで汚水をきれいにし、河川や海に放流されます。しかし、下水処理施設は、日焼け止めに含まれるすべての化学物質を完全に分解・除去できるわけではありません。
特に、微細なプラスチック粒子(マイクロビーズ)や、一部の化学物質は、下水処理施設をすり抜けて、そのまま河川や海に流れ出してしまうことが指摘されています。
このようにして、普段私たちが何気なく行っている洗顔やクレンジングが、河川を伝って海にたどり着き、海洋環境に影響を及ぼしているのです。
自然の力で紫外線対策
化学物質に頼らない紫外線対策もあります。古くから日差しから肌を守るために使われてきた、自然由来の成分に注目してみましょう。
- シアバター
シアバターは、アフリカに自生するシアの木の実から採れる植物性油脂です。天然の紫外線防御作用があり、SPF値は4〜6程度とされています。保湿力に優れ、肌を保護しながら紫外線から守ってくれます。
- ホホバオイル
ホホバの種子から抽出されるオイルは、人間の皮脂に成分が近いと言われ、肌なじみが良いのが特徴です。ホホバオイル自体に強力なUVカット効果はありませんが、抗酸化作用に優れており、紫外線による肌ダメージを防ぐ役割を果たします。
- 酸化亜鉛(Zinc Oxide)
酸化亜鉛は、天然の鉱物由来の成分で、日焼け止めによく使われる紫外線散乱剤です。肌の上で紫外線を物理的に反射・散乱させることで、肌への侵入を防ぎます。サンゴに悪影響を及ぼさない成分として、リーフフレンドリーな日焼け止めに広く採用されています。酸化チタンも同様に安全な成分として知られています。
環境に優しい日焼け止めを探そう

実際にどんな日焼け止めを選べば良いのか、具体的な商品例を3つご紹介します。
1.naturalshop Yafa Yafa(ヤファヤファ)
2017年、沖縄で生まれた「サンゴに優しい日焼け止め」。
紫外線吸収剤やナノ粒子、シリコンオイルなど生態系に影響が懸念される生分解性の低い素材を使わず、精油や植物オイルなど自然由来の成分だけでできた処方。
https://www.yafa2.com/
オーガニックコスメブランドとして知られるWELEDAは、天然由来成分にこだわった日焼け止めを提供しています。植物オイルやエキス、そして酸化亜鉛や酸化チタンを使用しており、肌にも環境にも優しいのが特徴です。
https://www.weleda.jp/
TAEKOサンスクリーン(日焼け止め美容液)は8つの無添加処方(紫外線吸収剤、揮発性油剤、界面活性剤、動物性原料、防腐剤、香料、エタノール、旧表示指定成分不使用)。肌と環境へのやさしさと強力な紫外線カットを両立。
賢い日焼け止めの選び方3つのポイント
1成分表をチェック!:パッケージ裏面の成分表を見て、「オキシベンゾン」「オクチノキサート」などの表記がないか確認しましょう。
2「リーフフレンドリー」マークを探す:一部の商品には、環境配慮を示す独自のマークがついています。
3紫外線散乱剤を選ぶ:「酸化亜鉛」「酸化チタン」などが主成分の日焼け止めを選びましょう。
4洗顔・クレンジングの方法も見直す 日焼け止めや化粧品を落とす際、使用する製品の成分にも意識を向けてみましょう。生分解性の高いクレンジング剤や、マイクロビーズを含まない製品を選ぶことで、日々の生活から環境への負荷を減らすことができます。
【さらにできること】
- 汗をかいたらタオルで拭き取るなど、日焼け止めが流れ出るのを最小限に抑え、洗顔料の成分にも気を付け、ふき取るクレンジングも取り入れましょう。
日々の小さな選択が、遠い海の環境を守ることにつながっています。地球に優しく、そして自分にも優しい選択を心がけていきましょう。














