「否定される男らしさ」から考えるジェンダー平等
SDGs目標5番「ジェンダー平等を実現しよう」は、私たちの生活の中でも特に身近なテーマです。今年の流行語大賞のトップ10には「ジェンダー平等」が選出され、社会・世論からの関心の高さが表れています。(現代用語の基礎知識選 2021ユーキャン新語・流行語大賞)
一方で、ジェンダー平等の多くは、女性視点で語られ問題定義されるため、男性がなかなか自分事化できないという現状もあります。そこで今回は男性視点からジェンダー平等について考えていきます。
ジェンダーとは何か
そもそも、ジェンダーとはどのような意味を持つのでしょうか?
ジェンダーとは(gender)生物学的に決定される性セックス(sex)に対して、社会的・文化的につくられる性別のことを指します。具体的には、セックス(sex)が「メス/オス」の区分のように生物学的に決定されるものに対して、特定の文化や民族、特定の時代が割り当てた社会的・文化的・心理的性をジェンダーと呼びます。また、ジェンダーは特定の文化や社会によって醸成されるので、時代とともに変化します。
ジェンダーについて考える切り口として、「男らしさ」「女らしさ」というキーワードがあります。今回は「男らしさ」をキーワードに掘り下げていきます。
男らしさとは何か
日本では男性のアルコール依存症や過労死は女性よりも多く、自殺者の数は2倍にのぼります。その背景として指摘されているのが「男らしさの呪縛」です。
男性学を専門に研究する大正大学准教授の田中教授は、「男らしさ」の定義として以下のものを上げています。
何が「男らしさ」とされるかは、時代や社会によって異なります。ただ、社会的な地位の達成、簡単に言うと「勝利」を求められる傾向があります。それをふまえると、「男らしさ」とは、「ある社会において競争を優位に進めるために求められる特性」と定義できます。(引用元:「男らしさの呪縛」って? みんなで考える#国際男性デー)
否定される男らしさから考えるジェンダー平等
令和3年度の男女行動参画局の調査では、男性への無意識の思い込み(アンコンシャスバイアス)として、「残業や休日出勤は当然」「人前で泣くべきではない」「家を継ぐべきだ」などの4項目が、女性に比べ男性の割合が15%程度高い結果となりました。
男性が社会的な責任を負わないこと、家族の生計を立てないこと、人の前で涙を流すなどの感情を表に出すことは、「否定される男らしさ」のイメージとして多くの人に未だに認識さられています。(令和3年度 性別による無意識の思い込み(アンコンシャス・バイアス)に関する調査研究)
また、「男らしさ」にこだわる男性はメンタルヘルスの問題を抱えやすいという調査結果も出ています。具体的には、男らしさについて厳格で異性愛規範(全ての人々が本質的に自然な役割を持つとされる男女のいずれかに入るとする規範な考え)を持つ男性は、そうでない男性に比べ、他者に対して暴力を振るいがちで、うつや自殺願望を抱えている確率が2倍高いことがわかり始めました。(Measuring Attitudes toward Gender Norms among Young Men in Brazil)
その流れに伴い、EUでは「caring masculinity」(ケアする男らしさ)という言葉をキャッチフレーズとして、男性の意識変化運動が起こりつつあります。ケアとは家事や育児をすることや、他者への配慮、自分自身へのセルフケアも含まれています。
私は、生物学的には女性なので男性の生きづらさや男らしさに縛られた経験はありません。しかし今回、男らしさをキーワードにジェンダー平等を考える中で、性別に関わらず、すべての人が自分らしく生きやすい社会を実現したいと心から思いました。