SDGs特選コラムNo. 802

戦争も止めるスポーツの力とは?クリスマス休戦にサッカーがもたらした平和と公正

戦争が悲惨であることは誰もが知るところです。現在の日本は平和国家としての道を歩んでおり、日本に住む私たちも当たり前のように平和を享受しています。しかし、いまこの瞬間でも、世界のどこかでは戦争や紛争が起きていることも事実です。人類が続く限り、戦争という行為は無くならないのかもしれません。戦争では、国籍や民族、宗教の違いから、顔も合わせたこともない人と戦わなければならないという現実があります。

そのような極限状態の中では、人々は武器以外で交わることはできないのかと思うと、とても悲しい気分です。しかし、戦争という極限状態の中でも、スポーツが人と人との交流や平等を証明した歴史的事実もあります。それが、第一次世界大戦時、1914年12月25日に起こったイギリス・フランス連合軍とドイツ軍の間で自然に発生した「クリスマス休戦」です。

この休戦はクリスマスの日に起こったことからクリスマス休戦と言われています。このクリスマス休戦の際、敵味方関係なく行われたのがサッカーの試合です。人類が初めて体験した未曾有の大戦争の最中、たとえ一時的にでも、スポーツが戦争を止めたことは事実です。今回はこのクリスマス休戦とサッカーに関して解説します。

クリスマス休戦とサッカー

第一次世界大戦の詳しい経緯はここでは触れませんが、ヨーロッパ全域を巻き込んだこの戦争では、地面を深く掘った通路に隠れて、互いに砲撃をしあう塹壕戦が各地で繰り広げられていました。鉄条網を挟んでわずか100mの距離で撃ち合う両軍でしたが、1914年の12月25日に、ドイツ側の塹壕から響いてきたのがドイツ語の「きよしこの夜」でした。

聞き覚えのあるメロディーに思わず、連合軍の兵士たちがドイツ側に向けて拍手を送ったと言われています。この拍手をきっかけに、ドイツ側の兵士も、塹壕から顔を出し、手を振ったりしながら、徐々に敵兵同士の距離は近づき、やがては両軍の兵士が武器を持たずに塹壕から出てきて、互いにクリスマスを祝い始めたといいます。

つい先ほどまで戦争をしていた敵同士ですが、互いに恨みがあるわけでもないもの同士、互いにタバコやチョコレートといったプレゼントを交換しあったり、戦死者を埋葬したりなどをしたようです。

そして、誰からか「サッカーをやらないか?」という提案があり、敵味方入り乱れての戦場のサッカー大会が始まりました。もちろん、戦場ですから、サッカーボールなどあるわけもなく、ボロきれを集めたり、缶詰の空缶をサッカーボールの代わりにするなどして、サッカーを楽しんだと言われています。そこには、敵味方関係なく、つい先ほどまで憎しみあっていたはずの敵の姿もなく、ただ、純粋にクリスマスを祝い、サッカーを楽しむ人たちがいました。

このようなクリスマス休戦でのサッカーの話は、複数の戦線で行われたとの話もありますが、残念ながらこの休戦も一時的なもので、その後、再び戦闘は再開され、第一次世界大戦では、最終的に3700万人もの人が命を落としたといわれています。しかし、一時的なものであったとしても、スポーツの力が人々から戦争や憎しみを取り除き、全ての人に平和と平等を与えてくれたのは事実です。

戦争が終わった後、ヨーロッパのサッカーは観客数を伸ばし、より盛況になったともいわれています。平和的に国同士が競い合うスポーツに、大きな可能性と喜びを実感したのが理由かもしれません。

第一次世界大戦から110年が過ぎた現在でも、世界から戦争は無くなってはいません。しかし、クリスマス休戦でのサッカーは、スポーツの力は世界中の憎しみや争いも無くしてくれるような、そんな力があると信じたくなる、歴史的な事実と言えるでしょう。

参照

https://seishoforum.net/ebisu/2017/12/148/

http://www.soccertalk.jp/content/2002/01/no398.html

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