残したい!田んぼの生態系
「地域の田んぼを残したい!」
「田んぼのいきものを守りたい!」
そんな思いで市民が稲作を続けている東京都内の棚田をご紹介します。
この棚田は東京都西多摩地域の山のふもとにあり、山に降った雨が少しずつ流れ込むため通年湿った環境です。田んぼの所有者は90歳を超え現在は農作業に参加していませんが、かつて教えを受けた市民有志により稲作が続いています。モリアオガエル・ヤマアカガエル・トウキョウサンショウウオ・タイコウチ・オケラなどが生息し、子ども達が田んぼの直接生物に触れることが可能です。よって、自然体験の場を求める親子が市街地や都市部からも参加し、畔づくり・田植え・雑草取り・稲刈りなどに協力しています。大人たちが作業する間、子ども達は畔や田で虫を捕まえ泥まみれで自由に遊び、本当に良い笑顔です。
メダカ・ゲンゴロウ・トノサマガエルなど、かつては身近だった田んぼの生物が絶滅危惧種になっていることをご存知でしょうか?これらの生物は稲作伝来の時代から、田んぼという人が作り出した環境を棲家とし適応進化してきたといっても過言ではありません。田んぼとともに生きて来た生物は、昔ながらの田んぼが無くなると他の環境に適応するのは難しく、急速に数を減らしてしまったのです。
耕作地の形が不揃いで一年中湿った棚田は、機械を入れるのが困難なため生産性が低く、真っ先に放棄されるのが普通でしょう。しかし、地域の生物多様性の向上や自然を直接体験できる場という側面からは守るべき価値のある環境なのです。
日本の農業従事者の平均年齢は66.8歳。この地域でも、農作業の主力になっている年代層が軽トラ運転に必要な自動車免許を返納する時に、一気に担い手不足が生じるのではないかと懸念されています。
もし、近くに守りたい田んぼや畑がある場合、その思いを所有者や身近な人に伝えてみてはいかがでしょうか。田畑は個人の財産なので他人が関わるのは難しい面もありますが、誠意と真心と人のつながりがあれば、地域の財産として市民が守るという選択ができるかもしれません。