持続可能なカーフリー社会がもたらす5つのベネフィット
カーフリーとは、都市中心部で車通行の禁止や規制をして、歩行者や自転車を優先する取り組みのことです。
特に脱車社会を目指す、環境先進国のヨーロッパではカーフリーな街づくりが急加速しています。
最近では毎年9月22日に、「カーフリーデー」というイベントが世界中で実施されています。
一度は耳にしたことがある方もいらっしゃるでしょう。
※参考:ヨーロッパモビリティウィーク&カーフリーデー日本公式サイトはこちら→★
もともとカーフリーの動きは1998年にフランスで始まり、2000年以降EUにも浸透し始めたと言われています。
特にこのパンデミックをきっかけに、人々の意識は「人生の質を高める、より健康的な空間」を求めるように変化しました。
こうした機運の高まりを受けて、スペインのバルセロナ、フランスのパリ、英国のロンドンなどヨーロッパの都市部では歩行者天国がさらに拡大予定です。
それでは、カーフリー社会が実現されると、どういったベネフィットがあるのでしょうか。
脱車社会先進国のEUを事例に詳しくご紹介します。
ベネフィット①大気汚染と騒音公害がへる
二酸化窒素やPM(粒子状物質)といった汚染物質は、肺の発育不全や呼吸器系の疾患、大気汚染物質が皮膚への刺激となりアトピーや皮膚炎、植物にも悪影響をもたらします。
車の交通量が規制されると、渋滞や排出ガスも減らせるので、大気汚染に起因する死亡や健康被害が格段に少なくなります。
実際に、2015年にパリの市内中心部で自動車の乗り入れが禁止された際、二酸化窒素の排出レベルが市内の一部で最大40%も低下、騒音レベルが半分以下に低下した報告もあります。
ベネフィット②交通ではなく「生活のためのスペース」が生まれる
車の交通量が少なくなると、道路が公園や広場、コミュニティ生活のための安全な場所へと変わります。
緑地が戻り、失われてきた都市の生物多様性も回復するでしょう。
ノルウェーの首都オスロでは、駐車場を削減した結果、自動車と歩行者の衝突事故がゼロになったという報告もあります。
ベネフィット③能動的な移動手段が増える
車移動の代わりに、ウォーキング、自転車、スケートボード、あるいはベビーカー連れや車椅子の人にもやさしい街のインフラが整備されていきます。
自転車大国のオランダ・アムステルダム市内では、街の至る所にレンタルサイクルが点在しています。自転車中心の都市設計がなされていて、地下鉄や電車にも持ち込みOK。長距離を移動したい時にもとっても便利です。
ベネフィット④持続可能な公共交通機関や移動手段に投資できる
車の道路建設や維持費には、多額の予算が必要です。
その投資分を再生可能エネルギーを動力源とする公共交通機関へ回したり、電気自動車のチャージステーションの増設に当てることで、CO2排出量の少ないモビリティー社会へシフトできます。
2022年1月に、英国政府はウォーキングと自転車の普及を促進する「Active Travel Englan(アクティブ・トラベル・イングランド)」という国家プロジェクトを発足して話題となりました。
スペースに空間が生まれることで、新たな交通システムの導入・建設がしやすくなる物理的なメリットもあるでしょう。
ベネフィット⑤都市のヒートアイランド化を抑える
道路が減り、温室効果ガスを撒き散らす車が減少すれば、地球のクールダウンにも役立ちます。
ヒートアイランド現象の一因である熱を吸収するコンクリートやアスファルトがなくなると、路面温度も下がります。公園や街路樹が増えることで、私たちの街はより涼しい場所へと変わるでしょう。
世界のトレンドとして、車社会は収束・縮小に向かっています。
2030年までのネットゼロ実現に向けて、ただ人々が暮らすだけに留まらない、人類の繁栄や地球の持続可能性を最優先する街づくりがますます加速しています。
欧州のケースを参考に、日本も持続可能な街づくりを再構築していく時期に差し掛かっているのではないでしょうか。
※参考
https://www.mlit.go.jp/sogoseisaku/carfreeday/carfreeday.pdf
https://www.motorbiscuit.com/paris-france-car-free-city-2024/