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地熱発電のメリット・デメリット-日本で普及しない理由

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一日中安定して発電する再生可能エネルギーがあるのならば、ぜひとも普及させたいですよね!
実は環境に優しく、一日中安定して発電してくれる電源があります。それが地熱発電なのですよ!
この記事では、日本が世界第3位の資源量を誇る「地熱発電」の仕組みから、メリット・デメリット、問題点、そして未来のためにできるアクションまでを分かりやすく解説します。読み終える頃には、あなたのエネルギーに対する視点が少し変わっているはずです。

地熱発電の特徴

まず地熱発電の特徴を簡単にお話ししましょう。
地熱発電は、地中から汲み上げた蒸気でタービンを回して発電します。
火山国でもある日本では、地中にマグマが溜まっている場所が全国各地に存在します。
そのような場所の上部の層で雨水などが溜まると、地熱貯留層と呼ばれる高温の流体が大量に存在する場所が形成されるのです。地熱発電はこの地熱貯留層から熱水や蒸気を取り出し、蒸気だけを発電に使い、水は元の場所へ戻します。また発電した後の蒸気は冷やして液体に戻し、こちらもまた地熱貯留層へ戻しますよ。

  • 生産井(せいさんせい):地下から蒸気と熱水を取り出す。

  • 気水分離器:蒸気と熱水に分ける。

  • タービン・発電機:蒸気の力で羽を回して電気を作る。

  • 還元井(かんげんせい):使い終わった熱水を地下に戻し、資源を循環させる。

上記の仕組みはフラッシュ方式と呼ばれ、地熱発電のメジャーな方式になります。一方近年では、水よりも沸点が低い媒体を用いるバイナリー方式も導入されてきました。具体例としては、温泉水を直接熱源として使う温泉バイナリー発電と呼ばれる事例が存在します。この場合、発電に使われた温泉水は浴用に最適な温度にまで下がるため、温泉地域での有効活用が期待されるのですよ。

そのような地熱発電は環境省によれば、事業性を考慮した導入ポテンシャルは約800億kWh/年と、日本の年間発電量(約1兆kWh/年)の1割弱ほど存在します。

決して低くないポテンシャル量を秘めているということがわかりますね。

太陽光のように「夜は発電できない」とか、風力のように「風が吹かないと止まる」といった天候に左右されないのが、地熱発電の最大の強み。これを「ベースロード電源」と呼び、安定した暮らしを支える柱となります。

地熱発電のメリット

地熱発電には以下のメリットが挙げられます。

  • 年間を通して安定的に発電できる。
  • 開発から運転に至るまでのCO2排出量が極めて低い(水力に次いで2番目)。
  • 運転時に燃料費を必要としない。

運転の開始さえできれば、これほど頼もしい電源はなかなかありませんよね。

さらに、日本にとって、地熱発電は単なるエコな選択肢以上の価値があります。

  • 世界第3位のポテンシャル:日本はアメリカ、インドネシアに次ぐ世界有数の地熱大国です。

  • 純国産エネルギー:資源を海外に頼る必要がないため、エネルギー自給率の向上に貢献します。

  • 発電後の二次利用が可能:発電に使った後の温水は、暖房やビニールハウス、養殖、そして温泉として地域で再利用できます。

知っておきたい地熱発電のデメリットと直面する問題

メリットばかりに見える地熱発電ですが、普及が進まない背景にはいくつかの影響や高い壁が存在します。

1. 開発コストと時間のハードル

地下深くを掘削するため、調査から稼働までに10年以上かかることも珍しくありません。また、掘ってみたけれど十分な蒸気が出なかったという「空振り」のリスクもあり、多額の初期投資が必要です。

2. 温泉文化との共生

日本にある地熱資源の多くは、国立公園内や温泉地の近くにあります。「発電を始めたら温泉の湯量や温度が下がるのではないか?」という地元の方々の不安を解消し、信頼関係を築くことが不可欠です。

3. 自然環境への影響

国立公園などの美しい景観を損なわないよう、施設をコンパクトにしたり、周囲の風景に馴染ませる工夫が求められます。国立公園や国定公園には自然公園法が定められていますので、そのような場所で開発の許可を得ることは容易ではありません。

また温泉地域の住民にとって温泉はかけがえのないものでしょうから、開発に対して慎重になるのは当然でしょう。

実際はフラッシュ方式の場合、地熱発電用の蒸気を汲み上げる箇所は温泉を汲み上げる箇所に対して重なりません。また上記で挙げたバイナリー式発電であれば、むしろ温泉と併せて有効活用が期待できます。発電事業者はその旨を、地域住民へ丁寧に説明する必要がありますね。

日本の地熱発電の施設数と現状

現在、日本で稼働している地熱発電所は、大規模なものから温泉バイナリー発電のような小規模なものまで含めると、約100カ所以上にのぼります。

    • 施設数の内訳: * 大規模発電所(3万kW超): 岩手県の松川、秋田県の山葵沢、大分県の八丁原など、主要なものは約20カ所。

    • 中小規模・バイナリー発電: 近年、温泉の熱をそのまま利用する「バイナリー方式」の普及により、九州や東北を中心に施設数が急増しています。

    • 最新の動き: 2024年〜2025年にかけて、熊本県の「阿蘇西地熱発電所」などが新たに運転を開始しており、長らく停滞していた大規模開発が再び動き出しています。

世界の地熱発電ランキング

日本は地熱資源量(地下にある熱の量)では世界第3位ですが、実際の発電設備容量(使っている量)では世界第10位前後となっています。

発電容量 国別ランキング(2025年予測ベース)

      1. アメリカ: 世界最大の導入国。カリフォルニア州などが中心。

      2. インドネシア: 急成長中。資源量は世界1位を争う。

      3. フィリピン: 国の電力の相当な割合を地熱で賄う。

      4. トルコ: 近年、爆発的に導入量を増やしている。

      5. ニュージーランド: 地熱技術の先進国。 .

なぜ他の国は多いのか?

      • アイスランド: 国全体の電力の約30%を地熱で賄い、暖房に至っては約9割が地熱(地域暖房)です。

      • ケニア: アフリカ最大の地熱地帯を持ち、国の主力電源として急速に開発を進めています。

地熱発電が日本で普及しない理由

日本ではとりわけ戦後、経済成長のために大量のエネルギーが必要でした。このうち電力については大規模な発電所が重視されたため、火力・原子力・水力発電が主に活用されたのです。

そのため比較的小規模かつ開発困難な地熱発電を進めるよりも、化石燃料やウランを輸入したりダムを活用したりして、大規模な発電所を導入することが優先されたのですよ。また福島原発事故を受けて2012年に固定価格買取制度が施行された後も、事業期間が比較的短い太陽光に比べて地熱発電はハードルが高いと認識されていました。

以上の理由により普及しなかった地熱発電ですが、カーボンニュートラルを目指すと日本政府が宣言して以来、再び注目されたのでした。

地熱発電を可能にするための対策と最新技術

地熱発電を可能にするための対策と最新技術画像イメージ

これらの問題をクリアし、日本の地熱をもっと活用するための対策が今、急速に進んでいます。

革新的な技術「バイナリー発電」

これまでの地熱発電は200℃以上の高温が必要でしたが、100℃前後の比較的低い温度でも発電できる「バイナリー発電」が普及しています。これにより、既存の温泉源を利用した小規模な発電が可能になりました。

地域との対話と「温泉×発電」の共存

最近では、発電した後の熱を地域の銭湯や農業に無償提供するなど、地域社会に利益を還元する仕組みが整いつつあります。「反対」から「共生」へ、対話の形が進化しています。

私たちが今日からできるエシカルなアクション

「地熱発電は国や企業がやること」と思っていませんか?実は、私たち消費者の選択が、地熱発電の未来を後押しします。

  1. 「地熱」を応援する電力会社を選ぶ 最近は、再生可能エネルギーに特化した電力プランが増えています。その中には「地熱発電」の電気を積極的に買い取っている会社もあります。

  2. 地熱を利用した製品を応援する 地熱の熱で育てられた野菜や、地熱乾燥されたドライフルーツ、地熱を活用した温泉施設などを積極的に利用しましょう。

  3. 地熱の現状をシェアする まずは「日本は世界3位の地熱大国なんだよ」という事実を、周りの友人や家族に伝えてみてください。

まとめ:地球の熱を私たちの暮らしの光に

地熱発電は、日本の豊かな自然がくれた最高のギフトです。課題はありますが、技術と対話でそれを乗り越えようとする動きが加速しています。

私たちが地熱発電について正しく知り、興味を持ち続けること。それが、この国をよりサステナブルで、レジリエンス(しなやかな強さ)のある社会に変えていく一歩になります。

・備考:

地熱発電とは?普及が進まない日本の現状を打破するためには?
https://earthene.com/media/316
地熱発電|再エネとは|なっとく!再生可能エネルギー
https://www.enecho.meti.go.jp/category/saving_and_new/saiene/renewable/geothermal/index.html
地熱発電のしくみ | 日本地熱協会 – Japan Geothermal Association (JGA)
https://www.chinetsukyokai.com/information/
日本で地熱発電が進まないのはなぜ? – エコめがねエネルギーBLOG
https://blog.eco-megane.jp/%E6%97%A5%E6%9C%AC%E3%81%A7%E5%9C%B0%E7%86%B1%E7%99%BA%E9%9B%BB%E3%81%8C%E9%80%B2%E3%81%BE%E3%81%AA%E3%81%84%E3%81%AE%E3%81%AF%E3%81%AA%E3%81%9C%EF%BC%9F/
日本は火山が多いのに地熱発電が普及していないのはなぜ?|再エネQ&A|世界を変える!?再生可能エネルギー
https://energy.jre.co.jp/faq/why-is-geothermal-power-not-widely-used-in-japan/
日本は世界3位の地熱資源大国なのに発電所建設が進まなかった3つの理由 | ニュース3面鏡 | ダイヤモンド・オンライン
https://diamond.jp/articles/-/200086
環境省 我が国の再生可能エネルギー導入ポテンシャル
https://www.renewable-energy-potential.env.go.jp/RenewableEnergy/doc/gaiyou3.pdf

2025年2月加筆

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