知っていますか?野生化した飼い鳥たち
「山に行ったらソウシチョウが1番多かった。」
「ガビチョウがウグイスを真似て囀っていた。」
「大木の樹洞から綺麗な鳥が出てきたと思ったらホンセイインコだった。」
このような話を、野鳥好きなら一度は聞いたことがあるかもしれません。
ガビチョウ・ソウシチョウ・ホンセイインコ、この3種の共通点にお気づきでしょうか?これらは全て、海外からペットとして持ち込まれた鳥が野生化し日本に定着したという経緯をもっているのです。
日本には古くから、鳥を飼い鳴き声を楽しむなどの愛鳥文化がありました。歴史の中にも、外交や交易の中で珍しい・美しい野鳥が献上された史実がいくつもあります。さらに、高度成長期を経て豊かになった日本では、ペットブームが起こりました。野生生物の輸出入を規制するワシントン条約に日本が批准したのは1980年ですが、それ以前は絶滅危惧種であっても無制限に動植物の商業取引が行われていたのです。
1976年に輸入された鳥類は300万羽で、輸入元の内訳は上位から順に台湾・香港・インド・タイとなっています。(注1)これだけの飼い鳥が輸入され飼われることになると、逃げ出す鳥や飼いきれなくなって放たれた鳥が一定数生じるのは当然の成り行きです。
カゴから抜け出して自由を得た鳥も、日本の気候に適応できず、餌やねぐらの問題や繁殖し続けることの難しさから、大半は定着することなく姿を消しました。しかし、最初に紹介した3種は、日本の広範な地域において生態系の中に居場所を見つけ、市民権を得てすでに半世紀ほども経っているのです。
人間の活動に伴って他の地域から入ってきた「移入種」の問題は、鳥類に限らず全ての生きものに関わることで、次のようなことが懸念されています。
- 生息場所や餌・繁殖適地などをめぐり、もともといた在来種と競合する
- 在来種と交配し雑種が生まれ、遺伝子レベルで在来種を圧迫する
- 在来種を上回る圧で餌動物を捕食するなど、地域の生態系を乱す
種の分布を地球規模で変えてしまうリスクまで想像して、ペットを飼い始める人はいないはずです。
「ペットを飼い始めたら何があっても野生には放さない」
これだけは改めて心に刻んだ上で、生きものが共にいる暮らしを楽しみたいですね。
(注1)参考資料…日本野鳥の会ワシントン条約シンポジウム関係資料(1978)